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アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

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アイドルジョッキーの歩む道は 17

翌週、日曜日。
碧たちの所属する地方競馬は、基本的に週末開催はない。
朝に馬の調教やエサやりを終え、週末の午後にすることと言えばテレビで中央開催のレースを見る…そんな感じだ。


「今からメインのパドックだね」
宿舎のテレビにかじりついていた厩務員の星野亜沙美のところに、碧がやってきた。

府中のメインレースはG1・ジャパンカップ。
芝2400mのコースで日本の一流ホースと海外の強豪が激突する。

「今年は見逃せないんだよねー」
「碧、それ何週間前から言ってたっけ?」

一番人気は現役最強馬の呼び声高いマルゼンホワイト。
春秋の天皇賞などG15勝を誇る名馬で、オーナーが大物演歌歌手であることも注目されている。
5歳牡馬で、次の有馬記念で引退の予定だ。

碧たちが注目するのは3番人気のウィンターローズ。
「オセアニアの女傑」と呼ばれる4歳牝馬で、オーストラリア最高峰のレース・メルボルンカップを勝って来日。
そしてその鞍上は22歳の女性騎手、リサ・ウィリアムズだ。

調教師はリサの姉で元騎手のカレン・ウィリアムズ。
紗英とは同年代であり、ウィリアムズ厩舎は言わば豪州の黒崎厩舎のような感じだ。
カレンもかつてそうだったが、リサも短期騎手免許を取って日本で騎乗もしているので、日本のファンも馴染みのコンビだった。

最初にリサが短期免許で日本に来たのは、碧がデビューの年だった。
姉のカレンが紗英の修行時代の知己であり、その縁で彼女達に会い、そして意気投合した。
彼女達姉妹から女ならではの騎乗技術や心構えなんかを学んだ事が、碧が所属競馬場でトップクラスに登っていくきっかけになったのだ。

「リサさんを応援したいんだけど・・・なやむー」
「ブランちゃん出てるものねぇ・・・ほんと、大出世だしね」

碧がそう悩み顔をすると、亜沙美が笑う。
彼女の言うブランちゃんはブランニューラインの事。
碧とのコンビで所属競馬場で連勝を重ねて中央復帰。
復帰初戦のアルゼンチン共和国杯を勝ち、ジャパンカップに出走してきたのだ。

まぁ、辞退する中央馬が多くての繰り上がりであり、人気も薄い。
それでも元関係者としては気になる一頭だ。

「マルゼンホワイトは諸澄騎手なのね・・・」
「気になる?、諸澄騎手って超イケメンだものね!」
「いやそうじゃなくて、どう乗るかの話」
 
諸澄との対戦を思い出しながら碧が言うと、亜沙美はニヤニヤとしながら茶化してくる。
諸澄は今の時点で中央リーディング首位を快走中。
碧にとってはその実力もさることながら、あの直線での笑い顔が忘れられずにいた。
どうしても次のホープフルステークスの事が頭に浮かんでくる。
諸澄とヴィングトールを破るイメージが全く持てないのだ。

「リサさんとカレンさんに会いたいなぁ・・・」

無意識に近く碧が呟く。
何か彼女達からヒントが得られないかなと、ジャパンカップを前に自分の次のレースの事をついつい考えてしまっていた。

ヴィングトールは強い。
将来、きっとマルゼンホワイトのような名馬になるだろう。

画面の向こうはG1のファンファーレが鳴り響き、いよいよジャパンカップのスタートが近づく。
歴戦の古馬、上昇著しい3歳馬、皆順調にゲートに収まっていく。
18頭、全馬ゲートイン。


『さあスタート!!………マルゼンホワイト出遅れた!』

これまで圧倒的な逃げ脚で魅せてきたマルゼンホワイトが、大きく出遅れたのだ。

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