下宿少女 23
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俺は今、リビングの床に正座している。
気分は死刑を待つ罪人だ。
みんなの顔が笑顔なのに怖くて直視できない。
「…あの、学校は…」
「今日はお休みね、時間はたっぷりあるから、ゆっくりお話しましょ。ねぇ?ゆうちゃん?」
「…はい。」
恐ろしい…
逃げ場を完全に塞がれてしまった。
腹をくくるしかないのか…
「さて…さっそくだけど、ゆうちゃん、あなたは昨日の夜に小春ちゃんとエッチした…間違いないわね?」
「…はい。」
冬美さんが真っ直ぐに俺のことを見つめてくる。
俺は力なく肯定することしかできなかった。
「あ、あの…ゆう君は悪くないんです!!!私が勝手に…」
小春が俺のことを庇おうとしてくれるが、やってしまった以上、罪は俺にある。
「それで?ゆうはどうするの?」
今まで黙っていた千夏が発言をした。
その顔は真面目で下手な答えは返せない雰囲気を醸し出している。
「…ごめん、たしかに小春のことは好きだけど、それは家族愛とかそういう類のもので…女の子として好きかって聞かれるとまだ答えは出せない…」
「ゆう君…」
自分でも最低なことを言っている自覚はある。
しかし、本当に異性として好きかどうかが分からない以上、ここで責任を取ると言うのは逆に失礼な気がした。
「…いいの、私が勝手にしたことだし…でもいつか絶対に、ゆう君が私のことを好きになってくれるようにしてみせるから…覚悟してね。」
そういって微笑んだ小春の顔はいたずらっぽく色っぽかった。
その顔が、昨夜の表情と重なり体温が上がっていくのを感じる。
「ふーん…つまりゆうは、まだ誰が好きか答えられないってわけね?」
千夏はそう言うと俺に近づいてくる。
その顔にはいつも通りの笑顔が浮かんでいた。
「ちな…んんっ!?」
「ちゅ…んぅ…レロ…」
次の瞬間、俺の唇は千夏に奪われていた。
たっぷり数十秒の間、俺の咥内を蹂躙されてようやく解放される。
「ち、千夏?」
「今のは宣戦布告って奴ね!!!」
「…それは俺に対してか?」
「それもあるけどね…」
そこで一度言葉を切って周囲を見回す千夏。
俺以外の一人一人の目を見ているようだった。
「小春だけじゃない、程度に差はあっても、みんなゆうのことが気になってるよね?」
「え…」
俺は呆気に取られてみんなの顔を見る。
「あらあら…何のことかしらね♪」
冬美さんは相変わらずニコニコとしていて否定も肯定もしなかった。
「…私は別に……」
秋穂はいつもと変わりないようだったが、僅かに頬が赤く染まっていた。
「これからは今までと同じように生活しながらも、各々がゆうにアタックしていく。当然、恨みっこなし!!!小春もいい?」
「はい!!!絶対に負けません…!!!」
俺のことを置き去りにして話が進んでいく…
どうしてこうなったんだ!?
「私、頑張るからね!!!ゆう君!!!」
「ふっふっふ…これからもガンガンいくから覚悟しなさいよ、ゆう〜」
「…まぁ、私もそれなりに本気でいきますから、よろしくお願いします、ゆうさん。」
「モテモテね、ゆうちゃん?お姉ちゃんも、ちょっとだけ本気になっちゃおうかな〜?」
どうやら、そういうことらしい。
正座したまま呆然とする俺の横では、いつの間にかやって来たにゃん二郎が平和そうに寝ていた。
お前でもいいから、どうにかしてくれないか…