先祖がえり 118
「はい、分かりました。・・・加奈ちゃん?コタちゃんの事、頼めるかしら?」
「あ、はいっ!!お任せください!!」
加奈は狐太郎を抱きしめることが出来ると思い、勢いよく両腕をさし伸ばす。
留美は狐太郎を加奈に預けると
「はうぅぅ〜・・・ご主人様ぁ・・・♪」
加奈は狐太郎を心底可愛がる。
「・・・では留美、説明を頼む・・・」
「あ、はい。」
こうして源之助と留美の二人は屋敷の奥へと行ってしまった。
残された狐太郎、加奈、それに美咲の3人だが
「・・・えへっ・・・加奈ぁ〜・・・」
狐太郎は久々の加奈の感触に顔を擦り寄せ甘えている。
加奈も加奈で
「あうぅ・・・ご主人様・・・可愛いです・・・♪」
狐太郎を可愛がることに余念がない。
と、そこへ
「あ、あの〜・・・加奈様?」
すっかり泣きやんだ美咲が加奈に話しかける。
「・・・? なんですか?」
加奈は目線を狐太郎から外すこと無く返事をした。
「・・・他の皆が待っていますので、ぜひ一度食堂へ・・・」
「・・・そうですか。では、ご主人様?食堂に向かいますよ?」
そう言って加奈は歩みを進めていく。
食堂へ向かう途中
「あの・・・加奈様、私にも狐太郎様を・・・」
美咲は加奈に狐太郎を抱きしめたいと願う。
しかし
「・・・美咲さん?さっき私と留美様の挨拶を無視しましたね?」
加奈は笑顔のままそう返す。
「えっ?!あ・・・」
自分のしでかした失態に顔を青ざめさせる美咲。
他のメイドたちならそこまで言わないだろうが相手は加奈。
しかも
「無視しましたね?」
狐太郎が居るため笑顔こそ絶やさないが、どうやら完璧に怒っている。
「も、申し訳ございませんでしたっ!!」
慌てて頭を下げる美咲。そのまま加奈の様子をうかがう。
「・・・で、ご主人様を抱きしめたいと?」
加奈は笑顔のまま美咲に聞き返す。
美咲としてもこう言われてしまっては
「あう・・・いえ、なんでもございません・・・」
引きさがるしかない。
「そうですか。・・・あらあら、ご主人様。そんなに動いたらくすぐったいですよ♪」
どうやらこれが美咲に与えた罰らしい。
美咲は「あうう〜・・・」と呻きながら後ろをついて行った。
「・・・つまり、狐太郎は力を自分の意思で操れるようになったのだな?」
「・・・はい。そう言うことになりますね・・・」
屋敷の客間で向かい合うようにして座る源之助と留美。
留美に今回の経緯を説明してもらいながら気づいたことを源之助は口に出す。
「そうか・・・ふふっ。」
珍しく笑みをこぼす源之助。
留美はどういうことか分からず
「・・・お爺様?」
その真意を聞いていた。
「いや・・・狐太郎もいよいよ『真の者』らしくなってきたなと思ってな・・・」
どうやら狐太郎の成長が嬉しかったらしい。
だが、その表情を見ていた留美は
「あの・・・」
なにか質問があるのか源之助に話しかける。
「ん?なんだ?」
「・・・コタちゃんの力って・・・一体・・・」
ずっと疑問に思っていた事を質問する留美。
「ああ。それはな・・・」
源之助はゆっくりと立ち上がると部屋を歩きながら説明を始める。
「・・・前にも説明したように、昔から『人狐』の雄は少ない。」
「ええ・・・存じています。」
「・・・それゆえ、その者はより多くの雌に愛され、求められなければならない。」
「・・・・・・」
「つまり、あの力は雌を虜にする力。狐太郎はその力を身につけたんだな・・・」
「・・・そう、なのですか・・・」
「だが、今狐太郎が身につけた力はその一部に過ぎない。あいつが暴走した時、もっといろんな力をかけられたのではないか?」