先祖がえり 116
「うう・・・ッグス・・・どうしてぇ・・・」
ついに狐太郎は部屋から出ることを諦め、快感を送り込むのを止める。
それと同時に
「コタちゃぁ〜〜〜ん!!!」
今だ!とばかりに飛びつく留美。
そして泣きながら頬を擦り寄せ
「ごめんね・・・ごめんねコタちゃん!!お姉ちゃん、コタちゃんに嫌な思いさせちゃったね・・・」
精いっぱい謝りながら必死に抱きしめる。
「ご主人様・・・よかっ・・・た・・・」
加奈はそう言うとよほど快感に耐えていたのだろう。糸が切れたように意識を手放した。
「なんで・・・僕はお姉ちゃんが・・・」
「大丈夫だから!!お姉ちゃん分かったの・・・コタちゃんは前と同じ優しい子・・・変わったのはお姉ちゃんの方・・・」
狐太郎の話を遮ってまで話を続ける。
「優しい・・・? でも僕お姉ちゃんに・・・」
こんなに怖い思いをさせたのに・・・
言葉を詰まらせる狐太郎の頭を留美は優しく撫でて安心させる。
「もう怖くないわ・・・怖いって思ってた私がいけなかったの・・・コタちゃんが心配することは何もないわ・・・」
そういって優しく狐太郎を抱きしめると
「う・・・うう・・・うああああああん! ごめんなさい・・・ごめんなさいぃ!!」
堰を切ったように涙を流す狐太郎。
留美は狐太郎が落ち着くまで抱きしめ続けていた。
窓からは西日が差しこんでいた。
「・・・ん、んん〜・・・」
意識を手放していた加奈が目を覚ました。
「あら・・・加奈ちゃん、目が覚めたかしら?」
「あ・・・留美様・・・はっ!そうです!ご主人様はっ?!」
意識がはっきりとしたのだろう。状況を確認しようと頭をキョロキョロと振り回す。
「静かにっ!!・・・ほら・・・ここよ・・・」
留美は加奈を落ちつかせると自分の胸の中に視線を送る。
狐太郎はその中でいつの間にか眠っていた。
「ああ・・・良かった・・・」
「ええ、本当に・・・」
加奈は狐太郎に近寄り、留美は狐太郎の頭を撫でる。
「ごめんね・・・お姉ちゃんのせいだね・・・でもお姉ちゃん、もうコタちゃんの事傷つけないから・・・コタちゃんはいつだって優しい子だから・・・」
優しく言い聞かせるように話す留美。
「あの・・・留美様。私にも撫でさせてください・・・」
近づいてきた加奈は留美にお願いする。
「・・・いいわよ。起こさないようにね・・・」
留美はそう言うと狐太郎の頭から手を離し、キュッと狐太郎を抱きしめた。
加奈はゆっくりと腕を伸ばし、狐太郎の頭を撫で始める。
「良かった・・・ご主人様、私は・・・加奈は何があってもご主人様について行きます・・・ですから・・・どうか、どうか捨てないでください・・・ずっと傍に居させてください・・・」
加奈は狐太郎に一生ついて行くと決意を新たにし、その思いを伝えるように優しく撫で続ける。
すると
「・・・んにゅ・・・ふぁ?」
狐太郎が目を覚ました。
加奈は慌てて手を離し、留美も心配そうに狐太郎を見つめる。
「コタちゃん・・・大丈夫?」
「ご主人様・・・」
泣きながら寝たせいだろうか、狐太郎は何度か目をパチパチとしばたかせると
「・・・あ、お姉ちゃん・・・」
従姉弟の姿を認める。だが、その顔はまだ申し訳なさそうだ。
だが、狐太郎がどこかに行く素振りを見せないことに留美は安心して
「良かった・・・もうどこにも行かないのね?」
そう言って狐太郎を再度抱きしめる。
「お姉ちゃん・・・ごめんなさい・・・」
留美の胸の中から狐太郎の声が聞こえる。
「いいのよ・・・悪いのはお姉ちゃんなんだし・・・もう怖いだなんて思ってないわ・・・」
「でも・・・」
まだ納得がいってない様子の狐太郎は留美を見上げる。
留美は少し思案した後
「・・・なら、試してみる?」
狐太郎を納得させるための提案をする。
「ふぇ?試す・・・って?」
狐太郎はどういうことか分からないといった様子で首を傾げる。
「コタちゃんがさっきみたいに私達を気持ちよくして、それで私が怖がらなければ納得してもらえる?」
留美はその真意を説明する。