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この学校の生徒の嫌悪の対象となったであろう棚井の妄想を具体的な形にして閲覧できるようにする。
そして皆が棚井と共通する思考を抱いていることに気づいて嫌悪感を抱くようになれば武への淫らな感情をつぶせるのではという考えだった。
(さて、これが凶と出るか吉とでるか)
武は棚井の嫌らしい笑顔に悪寒を走らせながら生徒会長とともに体育館を後にした。
そしてその日の放課後。生徒会室の入口は黒だかりの山になっていた。
棚井がさっそく妄想ノートに書き込んだのである。
お世辞にも読みやすいとは言えない字に生徒会の人間は解読に苦労するが、同時に顔に怒りが宿った。
内容があまりにも挑発的だったのである。
要約すると、武があるグループの慰み者になる。それをなんだかんだがあり、棚井が助けて相思相愛。肉体関係を結ぶというよくあるストーリーであった。
そしてその「あるグループ」というのが生徒会なのであった。
生徒会員は内心憤るも決は生徒会長にゆだねた。
生徒会長は無表情に決済をした。
得意げに棚井が生徒会室を後にすると待っていた男子達が生徒会室に雪崩れ込み、ノートを引きちぎらんばかりに取り合い、閲覧したのである。
読んだ男子達は瞬間湯沸かし器のように怒りが湧き上がったが、武は私刑を戒厳しく戒めた。
「あいつ調子に乗るぞ!?」
「だからって手を出せば思う壺だろ!」
男子と武の間ではそんなやり取りが何度も行われた。
その日の夜。視聴覚室では全身黒装束の男たちが集まっていた。
「まずい。非常にまずいことになった」
「うむ。このままでは『紫藤武に下ネタを使わせなくする』以前に男子達が分裂してしまう」
「心を一つにしなければならない事態だというのに…」
あの後、武はなおも食ってかかる男子達に「お前達も同じ穴のムジナだろ!」と言い放った。
それに男子達の一部が棚井と自分達を同じ目で見てるのか!?と怒り出したのだった。
武としては事の発端は棚井も男子達も武に女性になってほしいと願ったことだろう!と言いたかったが、男子達には棚井も自分たちも同じ理性のないケダモノだといわれたように受け取ってしまったようだ。
そこで武を擁護する派と武を批判する派がにわかにできて一触即発になってしまった。
双方をなだめようと声を上げる武だが、頭に血の上った男子達には届かなかった。
そこで武は非常ベルを鳴らして消火栓を開け、男子達を水責めにしたのだ。
なおも抗議の声を上げようとする者には容赦なく水をかぶせ、全員動けなくなるまで水責めにしてその場の鉾はおさめさせたというより捻じ曲げたのだ。