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額の熱冷ましシールを張替える。
自分で帰ってきた記憶がない。どうやら先生の車で送られて来たようだ。
口の中が異様に苦かったのはどこかで吐いたのだろうか。
家の中で特にきれいになっている場所はない。ということは学校から家の間ということか。
「うぉぉぉ…考えると頭が…気持ち悪い…」
スポーツドリンクをチビチビと飲み気持ち悪さを静めようとするが簡単には修まってくれなかった。
武はパンツの中に手を滑り込ませると股間を探った。
「畜生。結局は一時的にも戻らなかったじゃないか」
そこにはあるはずのない肉の溝がまだ残っていた。
「やっぱり、お星様にお願いを…か」
そこまで考えると泥沼のような気持ち悪さに飲み込まれながら武は眠りに落ちた。
次に武が目を覚ましたのは父親に起こされたときだった。
「夕飯は食べられそうか?」
「ん…。軽く食べたい」
「そうか。お母さんに言っておくから降りてきな」
父親の背中が部屋から出て行くのを眺めて武はぶっ通しで夜まで寝ていたのに気付いた。
体調はほとんどもとに戻っていた。
ベッドから起きると携帯にメールの着信マークが表示されているのに気付いた。羽生からだった。
内容を確認して見ると、今日は全校集会で保険医による性教育を行われ、安易な性交への危険性を徹底されたが逆効果になってるかもしれないということだった。
それともう一つ。
それに武は全身の毛が逆立つ気がした。
棚井についてだった。
教員の間で棚井は退学が妥当という考えが半数以上だったが、紫藤武を男として見るのなら同姓間での暴行事件として処理すべきであるということから3週間の停学処分となったということだった。
夕食の席では母親が気難しそうに武の顔をチラチラと見た。
「お母さん。俺、逃げる気はないから」と武から切り出した。
「あいつが復学したからって俺は転校したりはしないよ」
そう、自分の意思を伝えて簡単な食事を終わらせた。
お風呂に入ると頭痛が思い出したかのように痛んだが、次第に頭痛は沈んでいった。
「ふぅ〜。いつか対峙するのは分かってたけど3週間後か…。来るなら来いってんだ」
武は考えていた。生徒が棚井に制裁を考えていたらそれを止める。そして復習はしない。だが、手放しにはする気はないことを。