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「俺はどこぞの好奇心丸出しで闇の組織に殺されかけた青少年探偵か!?」
「心は男、体は女!その名は…!」どかぁ!「どぐへぇ!?」
「俺は男だぁ!」
武の上段つき蹴りが相手の胸骨に叩き込まれ、相手は一時呼吸困難に陥った。
「ったく、魂胆見え見えだっての」
男子達は武に酒を飲ませて朦朧したところで和姦に持ち込もうとしていると武は判断した。
武はラベルに「御神酒」か「毛生え薬」とサインペンで書いて教卓に置こうと思って踏みとどまる。
そして栓を捻った。
プキプキと栓が金属の千切れる音を立てて開けられると武は瓶を煽った。
「ごはぁ〜!?」
冷たい液体が喉を焼くように広がり、刺激は鼻を突き抜けた。山葵とは違う刺激に武は目を白黒させた。
「馬鹿!それはアルコール45%だぞ!?」
口の中から喉にかけて苦いやら辛いやら熱いやら。
が、しかし、武は子供のころに喘息の体質改善のためにやたら苦い漢方薬(粉ではなく煎じ薬)を数年にわたって飲み続けたり、身長や体型を男らしくするためにやたら不味いプロテインを飲み続けたことがあった。
喘息は治まったものの、身長体型はご覧のとおりであるが。
ともかく、不味いものには免疫のある武はさらに酒瓶を傾けたのである。
クラスのみんなが酔ってたかって取り上げたときにはもう遅い。授業開始のチャイムが鳴り先生が入ってきたのだった。
「…お前ら…何をしている?」
「ぅあ〜、先生ぃ。この時間、授業変更して俺を男に戻す研究しませんかぁ〜?」
傍から見たらへべれけ男子がいらんことを口走ってるようにしか見えないが、武にはまだ自我が残っていて自発的に言っていた。
「うぁつぅ〜(熱い)」そう言って武はシャツの胸元を解放させる。男子達は一瞬喜びのどよめきをもらすが先生の手前すぐにわれに返って武を拘束して保健室へと放り込んだ。
その日、クラスの男子達は放課後まで机の上で正座させられていた。
武は保健室で電解水を点滴され、夕方まで目を覚まさなかった。
「俺ぁ〜…男らぁ〜…」
何度も何度もそううわ言を漏らしながら点滴を受ける武。
翌日武はひどい二日酔いで休むことになった。
「ちくしょ〜、気持ち悪い〜」
家のベッドの中でひたすらうめく武。