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母親曰く、てっきり登校拒否で起きてこないのかと思ったとのこと。
女の立場から無理に学校へ追いやらず様子を見ようとしたらしい。
「お母さん。俺、男なんだからそんなに気を使わなくっていいよ。ノーマルのままオカマ掘られたって引きこもったりしないから」
武はドリンクを一気に飲み干すと「行ってきます」と家を飛び出した。
「あ〜一時間目は絶対間に合わない。保健室に非難するかな。くそ、夢の中ででもあの馬鹿の歯をへし折ってやりたかった!あ〜ベトツク!シャワー浴びたい!」
武は愚痴を隠さず学校へ走って登校した。
「で、今日は遅刻したと」
保健室の先生はお茶を啜りながら聞いてきた。
「いや、もう遅刻どころの時間はないと思うんですけど」
武は出されたお茶を冷ましながら答えた。
「ま、相談しに来たってことで遅刻扱いしなくてすむけどね。今日は朝から誰も来てないから」
「そんなんでいいんですか?」
「い〜のい〜の。あんたが相談に来たって実績があれば茶菓子購入もしやすくなることだし」
そう言うと先生は新しいお菓子の袋を豪快に音を立てて開けた。
「少しくらい休んでもズル休み扱いされないんだからサボるんだったら休んじゃえばいいのに」
「ん〜、休んだら負けかな思って」
教育者としてはどうかなと思える発言に武はネタと正直な気持ちを混ぜて答えた。
武は保健室で一時限目が終わるのを待ち、休み時間に職員室へ担任に挨拶をしてから教室に向かった。
「おはよう、武。今日は休みかと思ったぞ」
「ズル休みする理由が無いし、するならもっと有意義なときに休むよ」
「それって、誰かと夜明けのコーヒーを?」
「お前の尻マ○コじゃ夜食のラーメンにもいたらないよ」
「イヤァンっ!」
武の切り替えしに開いては関西糸目出っ歯芸人の自虐ギャグの悲鳴を真似した。
「武、武!」
ほかの男子が声をかけてくる。
「俺たちさ、武を元に戻せないかいろいろと考えてきたんだ」
「次の十五夜で一緒に祈ってくれるとか?」
武の中にほのかな希望の光が湧くように灯った。
「いや、それより即効なんだって」
男子は自分の鞄から何か取り出し武の机にゴトンと音を立てておいた。
それは紙袋に包まれた瓶だった。中身は透明な液体。ラベルには『シロイルカ』と書かれている。
武の中の希望の光が一気に暗くなった。