同時刻、都内某所。
痴漢グループのリーダーはアジトに戻ってきていた。
ニットキャップとサングラスと外し、上着とシャツを脱ぐと、サポーターが巻きつけられた豊かなバストが露わになる。
ズボンを脱ぎ捨てると、スポーツショーツの中から勃起したチンポの形が浮き上がっている。
そう、彼女もふたなりなのだ。

プルルルル…！
上着のポケットに入ってた携帯が鳴った。

痴漢「…はい。私です」
黒幕「計画は上手くいったかね？」
痴漢「もちろんです。用意周到な計画でしたから。予定通り上野彩花を拉致して調教ルームに運びました。田端夏美が付き添いで救急車に乗り込んでくれれば一石二鳥だったのですが…」
黒幕「今回はこれでいい。それよりも調教を怠るな。プライドを粉々に打ち砕き、心も身体も奴隷にするのだ」
痴漢「お任せ下さい。薬漬けにして犯しまくり完璧な淫乱奴隷に仕上げてみせます」
黒幕「次に用意するのはスキャンダルだ。ふたなり刑事どもを社会的に抹殺してやる。いずれ警視庁は特殊課を解散せざるを得なくなり、新設される課に編入させる」
痴漢「…その課とは、一体？」
黒幕「警視庁性犯罪防止課、だよ。調教されたふたなりどもが都民の精液便所となり、その身体を使って性犯罪を抑制するのだ！　はっはっは…！！」

電話の向こうで高笑いが響いた。
巨大な陰謀が霧島たちを飲み込もうとしていた。痴漢グループの黒幕は警視庁の上層部にいるのだ。

特殊課を襲う悪夢は立て続けに起きた。
事件から数日後、とある動画が動画投稿サイトにアップされたのだ。
そこには衆人環視の中、だらしないアクメ顔を晒してびゅくびゅく射精を続ける彩花の姿が映っていた。

『ひっく…ひっく…。私、警視庁特殊課の女刑事、上野彩花は！　皆さんの奴隷になります！　だから！　私のおチンポ一杯しごいて下さい！　射精させて下さい！　オマンコほじって下さいっ！！』
『お、オチンポ気持ちいいのぉ〜っっ！！　もっとしごいてェ〜っ！！！』

満員の車両内での盗撮動画は断片的で不鮮明なものだったが、衝撃は十分だった。
ザーメンが飛び散ってカメラのレンズにへばりつき、途中で画面が曇るのもえげつなさを増していた。
警視庁のサイバー犯罪対策課は投稿した高校生を即座に検挙した。
しかし時は既に遅く、世界中で何百万人もの人間が彩花の痴態を目撃した後だった。そしてその動画がネット上に拡散していくのを止める手立てはなかった…。
これは『わいせつ電磁的記録記録媒体陳列』という立派な犯罪であるが、犯人が未成年であったため少年法が適用され、少年は保護観察処分にとどまった。
少年法によって保護された犯人の記事を書く事が報道規制の対象である以上、マスコミの興味は必然的に被害者側へと向かうこととなる。

『誘拐された美人刑事の爛れきった私生活！！』
『ネットで淫乱宣言したふたなり刑事の素顔！！！』
『セックスを求めてやまない美人刑事に潜む心の闇！！』

ネット上に痴態をさらした美人ふたなり刑事は、常に新しい生贄を求めるマスコミの格好の餌食となった。
スポーツ新聞各紙はここぞとばかりにことさら扇情的な憶測記事を書き立てた。
彩花は退勤後、夜の街頭に立って売春しており、行きずりの男女に身体を売っていた等と書かれ、はては彩花から買春したと称する人物まで現れた。
そのせいで警察は極端に捜査情報を秘匿し、現在は厳重な報道管制が敷かれることとなった。

そしてここは警視庁刑事部特殊課のオフィス。

霧島「一体どういうことですか？　東堂課長！　私たちの仲間が誘拐されたんですよ？　まだ犯人の足どりも全然掴めていないのに！」
東堂「特殊課はこれ以上、事件の捜査に関わるな…。これは警視総監命令よ！　私たちの使命はふたなりの一般市民を性犯罪から守ること。誘拐犯を追うことじゃないわ。それにあの動画が投稿されて以来、警察の威信を傷つけたとして特殊課に対する風当たりもきついのよ。つまり『ほとぼりが冷めるまで当分おとなしくしていろ』ってことらしいわ」
霧島「課長は悔しくないんですか？！　彩花は行方不明のまま。あんな動画公開されて、嘘八百の記事書かれて…。その上このまま引き下がれだなんて！！」

バンッ！！
霧島が拳を激しく机を叩きつける。

東堂「悔しい気持ちはわかる。私だって同じ気持ち。でもこれは命令なの！　これ以上あなたが勝手に捜査を続けるなら、謹慎処分を受けることになるわ」

東堂はそう言うと、霧島に背を向けてブラインドの降りた窓から景色を見つめている。

霧島「…わかりました。もうけっこうです！」

霧島はくるりと踵を返すと、バタン！　とドアを思いっきり開けてオフィスを飛び出した。
彼女が向かったのは、警視庁舎内にある道場だった。