METAL・MAX―征服の進軍― 59
「は…みゅ?」
サクラが返事をしようとしたタイミングで、口元からヌラヌラ溢れる白濁した何かで一同が爆笑。
「アハハ…口内発射ゃ…むぎっ…ぷぎっ…?」
軽くむせ返したグレイスが、やたらと鮮やかな虹色のチュルチュルした何かを、唯一マトモなスープで流し込んでいる。
化学調味料のお陰で味は以外とマトモなのだが食感や色の類が微妙に怪しい。
多分そこそこ栄養満点で、健康に害する程ではない筈と考えたい…合成食品が並ぶ時代の食卓であった。
とまあ、こんな調子で現代人にはどこかいかがわしげにも感じられるメニューを食べ終えた5人。
チェックアウトして、2両の戦車に分乗してパーツショップに行った。
あたりには整備済みの120mm滑空砲や、エンジンのオメガブルやら、いくつかのパーツ−殆どは中古品だ−が置いてあった。
店のオヤジと思しき、赤いツナギ姿の男が声をかけてくる。
「いらっしゃい!」
「おう。」
律儀に返事しながら、タクス達は置いてある品々に目を向ける。
同時にボドーはオヤジの様子も見ていた。
サンダーピッチャー 電気属性の対空榴弾を打ち上げて周囲の敵すべてを電撃で焼き潰す。弾数8発。
CIWS レーダー内蔵式近接防空用対空バルカン砲。単体狙撃用。弾数10発。
「対空用S−Eはこんなところか・・・・。」
「ねえ、対空用S−Eはこれだけなの?」
タクスがつぶやき、サクラがオヤジに質問する。
「悪いが今はこれだけだな。」
「1台しか積めないからな・・・・どうするかな?」
一見すると如何にも『特殊弾薬でござい』感覚のサンダー・ピッチャーに比べ、CIWSの方がタマ代は安そうに見える。
しかし、人間用ないしクルマの副砲用ガトリング系火器と比べ、毎分辺りの発射弾数がケタ外れだ。
その上やはりSE用だけあって、同口径で出回る弾薬と発射薬や雷管、薬莢の規格が違う。
サクラが電卓と睨めっこした結果、両者の弾薬コストと調達の手間を天秤に掛けた具合は似たようなモノだった。
となるとこうした高級SE故の副次効果への期待によるチョイス、これまた頭痛のタネである。
正直、どっちもオイシイのである。
当然サンダー・ピッチャーには爆発と同時に電撃ダメージを与える効果、しかも電撃への耐性を持つモンスターは案外少ない。
そして破損品となるだろうが(Cユニットはほぼ確実にアウト)、クルマに流用可能なパーツ等の回収が期待出来る。
対してCIWSは通常弾薬仕様ながら、FCS兼用の対空レーダーがサンダー・ピッチャーよりも高性能。
つまり火器として使わずとも多少のバッテリー消費で、各種飛行型モンスターへの警戒装備たる効果で有利なのだ。