METAL・MAX―新たな軌跡― 100
…欠片ほどのモラルか実力の見せ所と見たか…はたまた賞金の為か、とにかく真剣だ。
「となるとアレだな…まず精密砲撃でキャタピラ狙いだ。」
「おぅ、ウチのロボがガキども誤射しねぇ様に調整…。」
そして黒騎士は皆が際限なく並べる意見を聞き別け記憶、記述してゆく。
腕っ節だけがハンターではないのだとノエルは感心していた。
休息は削られてしまったが、敵戦力の想定と大まかな編成がまとまったのは大きい。
「そろそろ出発の時間だな…各員乗車待機!!」
…今度の隊列では、ノエルとツェットは隣同士…。
ノエルは会議の内容をツェットに伝えると、イグニッションを捻る…うぉん!…心地良いエンジン音…フィルターに砂の混じた様な異音はない…ツェットは整備を済ませてくれていたらしい。
「さんく〜。」
「いえ…。」
どこか上の空なツェット…話の内容を理解して荷物の中からホローポイント弾を探り出しているが…交通管制を行う(朝とは別の)05型を気にしている様だ。
ノエルの方は前回の戦利品イントラテックの22口径マシンガンを引っ張り出して点検する。
一応マグナムの軟弾頭も用意してあるが、ちょっと微妙だ。
今朝ツェットに、弾と一緒に買って来させた予備弾倉のバネの具合を見た上で22口径を込めてゆく…。
豆鉄砲…しかも安物だが貫通弾の二次被害を出すよりマシと考えた。
やはり他のパーティも…戦車の貨物スペースから普段使わない低威力の銃を引っ張り出していた。
全部替えてしまうと他で困るのであくまで準備…こうした装備変更が『ステータス画面』で済む世界がうらやましい…。
ノエルは一本目に弾込めを終え…にひっと笑う。
「ツェットく〜ん…あの娘のおっぱいで何発ヌいたの?」
「し…してませんよっ!?」
顔を真っ赤にして全面否定するツェットをクスクス笑う。
「仕事終わったら『量』確かめるから…覚悟してねん?」
「えうぅ…。」
無論、ツェットを元気付ける為の冗談…かな?
そうこうしてる内に05型アンドロイドが紅白の旗をかざし始めたのでインカムを切り替え、黒騎士の指示と交通管制に合わせてクルマを発進させてゆく…。
夜通し砂漠を走破する強行軍…ハンターオフィスの情報だと、人狩り集団は黒騎士の予想通り工場地域に向かっているが先に着くのはノエル達…現地で仮眠をとっても、十分な準備が期待出来た。
トレーダー育ちのノエルに移動中の警戒、特に夜間の警戒には体の芯まで叩き込まれていた
十歳にも満たない時から自分の身長くらいあるライフルを持たされて警戒に当たらされた
走るトラックの上から乾いた闇に沈んだような砂漠を見つめていた頃を思い出す
自分すらこの闇に飲み込まれそうな不安に有線通信機で助けを求めて逆に怒られたのを思い出す
「大人って、理不尽ね…」
誰に言うでもなくポツリと漏らす
粋すぎた煙草の火が唇を炙るのに我に帰った