METAL・MAX―新たな軌跡― 83
ここまで状況が悪化した以上…逃げるしかない。
悔しいがジャネットのお陰で依頼は完了…時折襲って来るモンスターにサルの姿はない…恐らく全滅、賞金首の大佐も始末されている事だろう。
ノエルは警備システムにやられたらしいサルの銃…弾が残ってる奴を探し出す。
.22リボルバーのフレームを折り曲げた。どこか錆びているのか弾が上手く抜けない…軽く揺すってやると未使用の弾だけ手の中に落ちた。幸い弾はマトモらしい。
弾切れでカタカタ唸る自動機銃『ガンホール』にカラの銃を投げつけてやると床に引っ込み沈黙した。
「たく…予備弾倉くらい置いときなさいよ…。」
ノエルは毒づきながらイントラテック.22の弾倉に補充…手持ちは精々十数発。
体力の無駄だと、無視して前進する。ガンホールは顔を出す度、後続のメンバーに蹴飛ばされパカパカと出たり引っ込んだりを繰り返していた。
「この階段…その先が裏口ね…。」
気を抜いてはいけない…フォーメーションを組み360゜警戒で前進…。
…最初にノエルや筋肉ファミリーが侵入した、裏口まで僅か数十mの広い廊下…蛍光灯がチラつき、モンスターや警備システムの残骸が散乱していた。
ここでまた…硬さが取り柄の警備ロボ、あるいはターミ姉ちゃんジャネットが出てきたら…。
…警備ロボならまだ救いがある、実際半分位はノエル達を『来客者』と認識してくれた。一緒に戦ってくれる程お利口ではなかったが、素通りしてモンスターに向かってゆく甲斐性は見せてくれた。
ジャネットがご主人様ベルナルドから、どんな命を受けているか知らないが…相当痛い目にあわされるだろう。
不測の事態に虎の子の徹甲弾も使い切った今…警備ロボでもメイドロボでも、どのみち大ピンチ…。
…きゅるる…ふぁんふぁんふぁん…
リノリウムを擦る強化ゴム…パトランプの点滅…サイレンを鳴らしていると言うことは、ノエル達を不審者と認識した事実に他ならない。
マグナム拳銃弾あたりでやっとこさ貫通する…白黒ボディにべっとり血糊をこびりつかせた姿は、数々の『不審者』を排除した証か。
一斉に雑多な得物を構えるノエル達….22口径や弓矢でも運が良ければメインカメラやセンサーぐらいは…と身構える矢先…。
ずごぉ〜ん!どごぉ〜ん!
…落雷の様な銃声…大口径拳銃によるものか…。
警備ロボの頭部に弾痕がうがたれ首がひん曲がる。
どごぉ〜ん!ずごぉ〜ん!
銃弾は側面の壁をブチ抜きながら、警備ロボの装甲にめり込む。
…ロボット三原則のひとつ『自己防衛』に従い、ギシギシ言わせながら索敵プログラムを走らせた。
…壁の向こう側から撃ち抜かれた弾痕の先に…ちゅいぃん…複合センサーの紅い瞳。
…ごすっごすっ…めりめり…
衝撃音と破砕音が繰り返され、安っぽい建材に大きくヒビ割れが走り…。
…ぼごぉん!!…
コンクリ片とアスベストの飛末を巻き散らしながら…来ちゃった…面倒な奴…。
「目標補足、破壊します。」