METAL・MAX―新たな軌跡― 60
男はサングラス…網膜投射超音波ゴーグル(ソナーの様なモノ)を気取った手付きでズリ上げ…の解析濃度を調節する…。
…鍔の辺りから刀身の反射が無い…。
用心棒がバレットの弾倉を換えながら顎で、さっきまで男が居た場所を示す。
輪切りの銃弾に混じった…五等分された金属片…。
「ふ…昨日の百人斬り(嘘)でガタが来ていた様だな…。」
…じゃこん…
「うるせぇぇ!!」
どこーん!どこーん!
「うわらばぁっ!?」
なんかもうハードボイルドな余裕もないのか、男は意味不明な叫びを上げながら逃げ惑う。
チンピラ達は間抜けなダンスを披露する男を指さし腹抱えて大笑いだ。
…うわぁ…駄目じゃん…え?…こっちに来る?…えぇっ?…
ぐわしっ!
「ちょ…ちょっと?離してぇ〜!?」
「あぁ!?何考えてんだアイツ!!」
「ガキ人質に取りやがった!!」
男は…装甲板を抱えたツェットを押さえ込んだ…。
「人質を解放しなさ〜い!故郷のお母さんが泣いているぞぉ〜!!」
「少年、待ってろぉ…今助けてやるぅ…!」
…うわぁ…チンピラさん達や用心棒さんの方が良い人に見えて来たよォ…
「人質たぁ…人聞きの悪い…雨宿りみてぇなモンかなぁ?」
男はぎゅむっとツェットを抱き締める。
「貴方の様なロクデナシと!男同士で相合傘するつもりは…ちょっと?ナニ腰使ってるんですか?」
…COOLな剣豪ぽく登場したのになんかもう台無しである。
男はガレージ内に何かないかと見回していた…。
…ちきっ…
ツェットは冷めた表情で…ブローニングのセフティを解除する…足を撃ち抜くぐらいは…。
「おいおい…穏やかじゃねぇな…新しい得物も見付かった事だし、そろそろおいとましようか…?」
「はぁ…?」
男はツェットを放り出し…目的のモノがある場所まで駆けた…。
「野郎っ!!」
用心棒の.50口径が男の姿を追う…。
男の運動速度と超音波センサーは…常人の動きを遥かに凌駕していた…人としては兎も角、ソルジャーとしては一級だ。
彼の向かう先は廃材置き場…屑鉄同様の銃や剣、戦車装備等が放棄されている…。
その中から細長い装甲板の切れ端を手に取り超音波で大まかに強度を確かめた。
反射の具合からして、そこらのナマクラよりはイケそうだと男は直感した。
「出てこいぃ!この腰抜ぇえ!」
ずど〜ん!
用心棒が怒鳴りながら、ジャンクの山に一発撃ち込む…白兵タイプのソルジャーに接近戦を挑まれては不利にこの上ない。
どうにかいぶり出さねばとジャンクを撃ち砕く…。
「まぁまぁ…そう焦りなさんなって…。」
パラパラと破片が降りそそぐ中…次に男は工作台に飛び移る。
「コレだな…。」
そして大型のグラインダーを作動させ耳障りな音と共に、装甲板を裏表撫でる…。
「さぁて…支度は整った…お代は見てのお帰りで結構!」
漸くガレージから男が姿を現した…。
「今度はぁ…どんな大道芸だぁ!?」