METAL・MAX―新たな軌跡― 44
目下に光源…作業ランプで照らしながら、戦車の足回りを修理している下着姿の少年がいた。
メイドに気付いたのか、転輪のボルトを締めながら応じる。
「あぁ…目が覚めたんですね?
貴女のバックパックに予備部品があったから、勝手に治しちゃいました…調子は?」
「良好よ。」
張り替えられたシリコン皮膚の具合を確かめる様に銃を握り直す。
「こっちもすぐ治ります…こんな所で野垂れ死には御免です。」
「貴方は『死なない』わ…。」
…無防備なツェット…。
「私が『殺す』から。」
「え〜?何か言いましたぁ?」
「・・・!」
「よ〜し、これで治…。」
ぽい…ごつんっ!
見上げたツェットの鼻面に、安全装置のかかったブローニングが落下…クラクラと脳内に火花が散る。
「あうぅ…。」
「生き残りたければ…個人火器は手放さない事ね…。」
ツェットの傍らに降りるメイド。
メイドは再びブローニングを拾い上げ、ツェットのコメカミに突き付け安全装置を解除した。
「答えて。」
「な…何をですか!?」
メイドはそのままツェットを馬乗りに押し倒す。
「私を破壊するなりレ〇プするなり…機会はあった筈…何故助けるの?」
「え〜と…。」
ツェットは赤面しながら言葉に詰まった。
半裸の自分にノーパンの女性が跨っている…銃を突き付けられている事を除けば…かなりHな光景だ。
落ち着いていた皮かむりが再び男を主張する…。
「・・・。」
メイドは少し腰を浮かせ、ツェットのコメカミから股間に銃口を移す。
「わぁあっ?わあぁあっ!?」
「答えなさい。」
何かこう色々と男のツボを捉えてるというか…とにかく息子を人質に取られたツェットが呼吸を整えメイドの問に答える。
「凄く…嫌だったから…貴女は全力で僕らに向かって来た。」
メイドは息子を捉えたままだ。
「そんな人の寝首を掻くなんて『人として』間違ってます…それに…貴女だって僕を殺す機会はあった筈でしょう?」
「貴方には修理してもらった義理があるわ…ご主人様には拾って貰った恩があるの。」
メイドの顔が…吐息が顔で感じられる距離まで近付く。
「だからあんなチンピラがご主人様…なんですか?」
「義理に報いるだけの電脳はあるの、ご主人様と認めた以上は尽す…そうプログラムされているの。」
大方…戦闘か事故でご主人様を失ったこのメイドをベルナルドが拾っただけだろうが。
「あんな連中より、その…貴女が良ければ僕らの所に…。」
メイドはツェットの言葉に…青白いシリコンの表情を一瞬歪めた後、いつも通りの無表情に戻る。
…憐れみなど求めていない…私が求めているのは…
「助けて貰った義理だけは返します。」
メイドはツェットの下着…シマパンを脱がせる。
「え?」
非常時にも関わらず元気な皮かむり…。
「ぞーさん。」
…ガビ〜ン…
「そ…そんな言葉どこで覚えるんですか…。」
メイドの評価にそれ以上言い返せないツェット。
「かぷ…ぞーさんは嫌い…。」
「あ…ん?」