METAL・MAX―新たな軌跡― 32
…ふがふがふが…ごつんっ!
何か凄く硬質で重量のあるモノで頭ぶっ叩かれた。
「あうぅ…?」
「女子供泣かしちゃいけねぇな。」
ぱちぱちと火花が散る目の前に…旧式の軍用拳銃が差し出された。
「持ってけ、せんべつだ。」
「工場長っ…今まで御世話になりましたあっ…うぅえ…。」
顔を涙でくしゃくしゃにするツェットの肩をぽんと叩き…ぷるぷるぷる…と去って行く…。
「う…うぅええぇ…。」
「お別れは済んだ?ボーヤ?」
「あなたに関係ないです」
「ご挨拶ね。迎えに来たのに」
「僕のこと見限ったんでしょ?だったら用は無いはずです」
「覚悟のない子を養ってく余裕はないって言ったの
今の君はきっといい仲間になれるわ」
「…、僕は別のハンターと」
「君のデビューハント、暴走戦車よ
君の戦車もまだまだパワーアップに部品が必要でしょ。下手な大物狙いよりいい経験になるわよ」
「ですから僕はあなた以外の…!」
「グチャゴチャ言わない!黙って着いて来る!!」
「はいぃ!…あ」
「じゃ、決まりね
私はノエル。改めて宜しく」
ノエルはツェットの手を取り、強引に握手した
「ちょ、ちょっとお!?」
「君の戦車砲だと口径に少し不安よね
砲弾屋で対戦車用に鉄鋼弾を補充しましょ
それと…」
ノエルはこれからの行動を一人で決め、高機に乗り込み走り出す。ツェットは少し悩むと突撃戦車に乗り込み後を追った
「大丈夫かね、あの子」
「嫌になれば逃げ出すさ。それもいい経験だ。帰ってきたら迎えてやればいい」
「逃げ癖が付かなければいいんだけど」
工場の窓からマジンガとじーさまがいつまでも見送った
…とにかく元の鞘…というには少し違うが話はまとまった…。
…ハンターオフィス…
「はい…ツェットさんをメカニックとしてノエルさんのパーティに登録しました。」
…なんかこの人、苦手なんだよな〜…でも適当に煙に巻いて逃げられる状況じゃなくなってきたし…あ…でも…こっそり登録抹消して…別の街で仲間探しすれば…
などと画策しているツェットに、満面の笑みを浮かべたノエルが振り返った。
…なんだよ…昼間はあんだけ好き勝手言ってたクセに…なんでそんな顔できるんだよ?…
「なんか、すっごい複雑な顔してるね。教えたげる
この世界はね、ついさっきのことも簡単に覆(くつがえ)るって割り切らないとやってけないんだよ」
「…僕がここで抜けることもですか?」
「もっちろん!
この瞬間、解雇を言い渡すのもね」
胸を張って言い切るノエル
ツェットが次の言葉を発する前にノエルはきつく抱きついた
「でも、離したげない!」