METAL・MAX―新たな軌跡― 30
「だったら…。」
「うわあぁあっ!」
…ごっ…
言い終わる前にツェットの拳がガンマンの顎に食い込む…。
しかし効いた風もなく、ツェットの腕を捻り吊り上げる。
「人が話しようてんだから最後まで…。」
「離せ〜離せ〜!このぉ〜!?」
聞いちゃいねぇ。
いい加減ハラが立って来た、というか面倒臭くなって来たので…今度はツェットを思いっ切り叩き付ける。
「げふ?」
「ふん…。」
そして大の字で動かなくなっているツェットの腹の上に、旧式BSを放ってやる。
「まだ腐ってねぇのは良くわかった…。」
「・・・。」
ツェットもようやく大人しくなった…ガンマンは諭すように語りかける。
「どこの墓場も…勢い任せの小僧や小娘で満員さ…荒野で生きてくにゃ臆病なぐらいで丁度いい…。」
「・・・。」
そして懐から皺くちゃの紙巻き煙草を抜き、踵でマッチを擦り一服つけた。
「だがな…ここぞって時…獲物を仕留める、大事なモノを守る…そん時ゃ躊躇うな。
覚悟さえキマってりゃ泣きわめいて小便漏らしながらでも…ヤれるモンだ。」
恐らくノエルもそれが言いたかったのだろう。
「後は…お前さん次第さ…って…ん?」
聞いているのか!と怒鳴りかけたガンマンだが…。
「きゅうぅ〜…。」
ツェットの頭上にはヒヨコの気絶マークが飛び回っていた…強くやりすぎたらしい…。
「あ〜このっ!世話の焼けるっ!」
ガンマンは腹立たしげにツェットとガラクタを抱え上げて裏路地を出た。
…路地から少し離れた所に、ツェットの作業服と同じ『鉄の穴〜』と書かれた改造軽トラが停まっていた。
「ふん…アレだな?」
正確には違うけど…ノエルはツェット任せにして、病院に行ったのだろう。
ツェットのポケットからスペアキーを探り出す。
…座席にツェットとBSを放り込み、ドッグシステム帰宅モードをオンにする…。
ガンマンはノロノロと安全運転で走り去る軽トラを見送り…泣けるぜ…とひとりごちた。
…鉄の穴第08支店…
沈んだ表情のマジンガに、ノエルはただただ平謝りするしかなかった。
「本当に…すみま…。」
「もういいって…顔を上げとくれ…。」
軽トラで帰って来たツェットは部屋で寝かせてあった…。
「これで良かったんだよ…もう…これに懲りて旅に出るなんて言い出さないさ…。」
その上ノエルがトドメを刺し、ガンマンのフォローも…。
慰めついでに童貞食って帰ろう…などと考える程、節操のないノエルでもなかった。
「じゃ。」
「ああ…またね。今度来る時までに、ツェットを立ち直らせとく…町の改造屋としてね…。」
…ツェットの部屋…
当のツェットは葛藤を繰り返していた…。
色々な事があった…そして憧れた外の世界…現実を思い知らされた。
ガンマンが置いて行ってくれたBSコントローラー…いっそこのまま、思い出のアイテムと共に奥底へ…。
「HEY!坊や!どうしたシケたツラして!?」
「誰?」
振り向いた先には…『幻覚』だろうか?