METAL・MAX―新たな軌跡― 142
TVのBS放送ではヒゴ・モコス(大崩壊前で言う九州)の事件報道が流れていた。
手配中だった変質者が、携帯シャベルひとつで地下を掘り進んで逃走していた所、その真上に重戦車が通過し、やっつけ仕事のトンネルが崩落し御用。
お縄を掛けられた、尊大な態度の貧弱メガネがカメラに向かって何か吠えていた。
『弁護士を呼んでくれたまえ…あと幹部としての待遇と、美女のパンチィストッキングを要求…』
そんな世迷い言の終わる前に、被害者女性らしき一団に袋叩き…ノエルはTVから目を反らす。
「ストキング…邪道とは言わないが…外道…いや、それも道か…」
そう呟くとカウンター席にいた小太りの男が席を立ち、酒にふらつく足取りでBraを出て行った。
どんがらがっしゃ〜ん
男は転倒し、ゴミ捨て場に突っ込むと、ストリートチルドレンに寄ってたかられる。
「あ、いや〜!やめ、そこはって、てんめぇら〜!」
どぱたたた!
男は子供たちに丸裸にされそうなところをSMGを乱射して追い払った。
「畜生、財布が…!え?はい。そうですけど…いや、だってガキ共が…!いや〜!」
男は飲酒後の銃乱射で自警団にしょっ引かれた。
そんな一幕をスルーしてノエルが二人に見せたBS画像の手配書。
「ねー…コイツなんかどうよ?」
砲撃仕様の女性型サイボーグ『蓮砲』とある。
五番アイアン『礼子』でブレイドを叩きのめしながら小首をかしげるメイニーに、ノエルもまた酔い加減で小首をかしげる。
「マズい?」
「うん、さっきの奴から名前的に…ってコラ待て!」
メイニーが逃げようとしていたブレイドを虫ケラの様に見下ろし、今度は『ひぐらし』と刻まれた大鉈を振かざす。
「もうしませんからッ!」
「う・そ・だッ!」
白眼九割ぐらいで瞳孔開いて『あははは』と高笑いするメイニーを、ウェイトレスやら厨房のパートさんやら達が取り押さえていた。
そこでブレイドが『モテる男は辛いねぇ』などと抜かすモンだから結局フルボッコされ、何処の酒場にもいる無愛想なバーテンが『ふん…』と鼻を鳴らす。
「地道に徘徊モンスター退治で小銭貯めるかぁ…。」
ツェットが動けなくとも三号突撃砲…ガソヘッドはメイニーのトレーラーからの遠隔操縦で、ドライバー無しでも移動砲台程度の使い道はある。
車載Cユニット内蔵の簡単なシミュレートでも、数千G単位の賞金首相手は辛い戦力という計算。
ツェットが復帰するまでは下車戦闘か、機銃と通常砲弾程度の運用…つまり雑魚退治でボチボチ稼ぐのが妥当と言う現状だ。