METAL・MAX―新たな軌跡― 12
「中の人の避難が終わって結構経つけどまだかしら?」
アモウはハマーの屋根の上から足を垂らしプラプラ揺らした
「さあね。お前、ちょっと行って見てきてくれよ?」
ボウイは高機の下に潜り込み改造を施していた
「絶っ対嫌!あなた行きなさいよ」
「俺は手が放せん」
通行人が食堂の暖簾をかき分けて入ろうとした
一瞬全身の毛を逆立てると、入ろうとした素振りをかき消して通り過ぎる「まだみたいよ…」
「そうか」
その頃
ノエルとシンバットの耳の奥ではミュータントセミのメタルバンドが演奏されていた
空はすっかり暗くなり、食堂の出入り口から漏れる明かりが路地を照らす
ボウイは砲台に張り付き、改造していた
「いい加減腹減ってきたな」
あるから何人もの客が店内を覗くと逃げていった
オバチャンマシンガンは流れ弾が怖い
下手すると自分まで標的にされかねない
君子でなくても動物的本能で近寄らない
「カレーマンの移動販売車で買ってきたよ」
どこからか戻ってきたアモウがボウイにカレー弁当を差し出す
「ラッキ。飯にするか」
ボウイは油で黒くなった手でお構いなしにスプーンを握る
「オバチャンに見つかったらマシングレネードものよ」
「いや、マシン対戦車ライフルだろ」
二人がカレー弁当を食べ終わる頃、ノエルとシンバットが両手に袋をぶら下げてゾンビガード(ゾンビ化したセキュリティロボット)の様にフラフラと出てきた
荷物は説教に飽きたオバチャンに持たされた料理の残りだった
「お〜お、二人とも生気抜かれちゃって」
「笑ってる場合じゃないぞ。とっとと退却しないと機関砲で範囲爆撃されたら洒落にならん」
ボウイはカレー弁当をかき込むと高機をハマーに牽引させ、二人を放り込むと撤退した
「「ぅ〜ぁ〜」」
呻き声すらゾンビな二人を連れてボウイとアモウは町の外れまで(逃げて)来た
「どうする?今夜はこの町に泊まるか」
「いや、次のポイントに進む」
立ち直ったシンバットは90式によじ登り、アモウを押し退けて中に収まった
ボウイは牽引を外すと運転席に着く
アモウはノエルの頬にキスして「二つ名を変えたいなら早く功績をあげなさい」と言い、助手席に入った
二台はクラクションを鳴らすと走り去る
遅れて立ち直ったノエルは手にぶら下げる荷物に目を落とすと路地の隅にうずくまる浮浪者の側に置いて去った
…段ボールを家と呼びポリ袋を服と言い張るワイルドな方は、腐ってないカロリー高めな匂いを感じ取ると淀んだ瞳をぱっと輝かせ袋に飛び付く。
ノエルの施しに礼を言うと、ハンターが集まる酒場やら格安で腕の良い改造屋やら教えてくれた。
その懐には錆びを浮かせた22口径のサタデナイトスペシャル…彼もまた、夢か正義か復讐か…それとも別の何かを追い求めていたのだろうか?
…ノエルは酒場に向かう…。