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老兵と少女
官能リレー小説 - 戦争

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老兵と少女 2

先ほど振り出した雨はまだ止む気配をみせていない。
たとえ冬であっても雨のふる日は比較的暖かいものだが、きょうはやけに寒かった。
「この寒い中よく濡れたブラウスでいられたものだ。」
男は独り言をつぶやいた。ソフィアがいないときにはひとりごとが多くなる彼なのだ。
「この様子だと夜には雪に変わるかもしれない。」
常に野外で戦っていた彼は天気に詳しい。天気の急変により、火薬や銃に影響が出たり、体調に変化が生じるためだ。長年の経験により、男の天気に対する感はかなり磨かれていた。
くしゅん。と小さなくしゃみが聞こえた。ソフィアがくしゃみをしたようだ。
戦場にいたころは気軽にくしゃみもできない。ずいぶん気が緩んできたようだ。
ソフィアは下着にタオルをまとった姿で現れた。少女とはいえタオルで隠し切れない彼女の下肢をみて
男は一瞬目を奪われた。
「ごめんね。あなた。今着るものがないの。」
彼女はそういって彼を抱きしめた。冷たいがやわらかい彼女の両手が男の背中をとらえた。
ふいたばかりのブロンドのポニーテールのにおいが彼の鼻を刺激する。
男は同様しながらもソフィアの背中に手をまわした。
「暖炉に火をいれよう。そうすればあったかいミルクだって。」
男が立ち上がろうとするが、少女は媚びるような目で男を見た。
「お願い。もう少しこのままでいさせて。」
官能的な少女のまなざしが数センチの距離から彼を見上げている。
自分の高鳴る鼓動と彼女の大きな息が彼を引き留めた。
外では雨が窓を叩いている。それ以外には彼女の息と自分の鼓動しか聞こえない。

「ずっと、怖かったの。私をキャンプ場に残してあなたが、偵察部隊として戦場を駆け巡っているあいだずっと。」
ソフィアは背中の傷を触りながらいった
「やさしくしてくれる人はたくさんいた。みんなあなたがついているから私に手出しはしなかった。でももしあなたが帰らなかったときに私に手を出そうとしている視線は常にあったの。なにより私にはあなたが死んでかえることが耐えられなかった。」
男はソフィアの涙を拭いた。
「すまないな。俺は人を殺してきた。それが仕事だからだ。だが、俺は自分を恥じとは思わない。自分を必要としてくれる人が戦場にはいたんだ。徴兵代理として高く買ってくれる人もいたし、元大統領と同じ部隊に配属されたこともあった。それが俺にとっては誇りだった。例えそれが他の命を奪ってきたことへ目を背ける行為と分かってはいるさ。だが、その誇りを失うと俺はただの殺人鬼なんだ。俺は初めて人を殺した日、興奮と恐怖で眠れなかった。今でもあの日を思い出すと恐怖が蘇ってくる。名誉というあいまいなものからソフィアお前という明確な守りたいものができた。だから俺は今生きている。退役した日、俺は名誉を失ったのだ。」


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