特別慰安隊 2
だがこのままいくと、見知らぬ男に処女を捧げることになりそうだ。
不幸中の幸いというべきか、特にこれといって好きな男はいなかった。
もしいたら死ぬほど後悔しただろう。
先頭を歩くアリサ准尉は普通の下士官服を着ていた。
特慰隊と聞いて、やたらと露出度の高い制服を想像していたが、意外と普通だった。
しかし、華奢な体にポコンと突き出たおなかが不自然に見えた。
どう見ても、太っているようには見えない。
特慰隊の任務から導きだされる答えは一つしかない。
だがそれは、クリスにとって一番あってほしくない答えだ。
礼を失すると思ったが、今後の事を考えて、アリサにおなかの事を聞いた。
「失礼だけど、貴方のおなかなんだけど」
「これですか、今妊娠中なんですよ。これもまた特慰隊の任務の一つですよ」
「任務のひとつって、ゴムやピルを使えば防げることじゃない」
幾ら処女でも避妊の仕方ぐらいは知っている。
慰安任務といっても、最低限のことぐらいは守られると思っていた。
「特慰隊の規則で決まっているんですよ。避妊はしない。妊娠したら中絶せず産む。生まれた子は軍が引き取るか、自分で育てるか選択できます」
避妊どころか、中絶する事すら許さないというのだ。
「軍に引き取られた子は、養子先を斡旋されます。引き取って育てるを選んだ場合、国から養育費が支給されます。養育費の支払いは退役後も続き、子供が成人するまで支払われる事になります」
産まれた子供については、手厚い保障が受けられるようだ。
さらに子供1人を産むたびに、養育費とは別に報奨金が母親に支給されるそうだ。
しかし、どれほど報奨金が支給されても、また、幾ら軍務とはいえ、見知らぬ男の子を妊娠するなど、クリスには納得しがたいことだった。