戦争 14
「ふふ、頼もしそうなお方ですわね・・・こちらこそよろしくお願いいたします」
「あなたのような方と働けることをとても光栄に思います。
この任務、成功させるようにお互いがんばりましょう」
仲間となる護衛役との挨拶を済ませた僕らは、ついに護衛対象である調停役との顔合わせに移った。
「ではどうぞこちらに。今回の護衛対象となる方がお待ちです」
案内された部屋の扉を開けるとそこには、……豚が居た。
いや、違う人だ。
人間が居た。
丸々と肥え醜い姿をしているが紛れもなく、それは人間だった。
この国でそんな姿になれるとすれば、それは王族の者だけだ。
「ん……なんだ、来たのか。遅いぞお前達!」
豚…じゃない、調停官は僕達に気づくと飲んでいた酒を置いた。
歳は30位で、よく肥えたダルマのような男性だ。
「いいか、私がこの国の救世主となるフェラート・パズリ様だ。
その護衛の任務に任命された事は、大変名誉な事である。
その命を持ってしっかり、俺の安全を確保するんだぞ!」
なんとも典型的な王族思考の持ち主だ。
「それはそうと…なんで男が居るんだよ。
父上に美女で揃えてくれって言ったのにさあ!
……まあ、その二人はかなり上物みたいだけど」
「……ゴホン、この度、護衛任務の隊長を任されましたアルア・カートンであります。
そして、後ろの二人が部下の…」
「レヴィです」
「ミラです……うふ!」
何を思ったのか挨拶の終わり際、ミラは色気を込めたウインクを調停官殿に飛ばした。
鼻の下を伸ばし二人を舐めるように見ていた、調停官殿にその行為はクリティカルヒットする。
「うほっ!…………ウッ!!」
一瞬にして、調停官殿の股間がテントを作ったと
思うと、次の瞬間、調停官殿はビクビクと震えながら崩れ落ちると、股間をねっとりと濡らしていた。
「なっ!!ミラ、何をしたんだ!?」
「ふふ…何もしてませんわ、勝手にイっただけですわ」
「堪え性の無い男ね、こんなので大丈夫かしら?」
ミラのウインクだけで爆発した、調停官を見下しながら女二人は妖しくあざ笑っていた。
それが男のプライドを刺激したのか、それとも別の理由か。
あっさりやられたはずの豚面調停官が、醜悪な笑みを浮かべて復活した。
「ぬ、ぬふ、ぬふふふ・・・こ、これくらいのことで王族たる俺様がヤラれるわけ、ないだろぉがぁ・・・!」
きっと余裕の笑みを浮かべているつもりなのだろうが、冷や汗ダラダラ流しているわ足は生まれたての小鹿のように震えているわ。
明らかにやせ我慢しているのがまるわかりだ。
せめてそこで終わらせておけばいいものを、フェラートは自分を追い詰めたミラたちに向かってとんでもない暴言を吐いた。
「ぐ、ぐふふ。王族の恐ろしさも知らないバカ女どもめ。
今晩は俺のベッドの上で王族の何たるかを身体に刻み込んでくれるわ」
「・・・あ〜ら。王族さまからお誘いをいただけるなんてなんて光栄なことでしょう」
「せっかくです。今晩と言わず今から楽しみませんか?ええ、退屈なんてさせませんよ。させてたまるものか・・・!」
「ちょ・・・!?お・・・おい、ミラ!レヴィ!」
2人の剣呑な雰囲気を察した僕はあわてて待ったをかけるが、2人は完全に無視。
人類かどうかも怪しい生き物にナメられ、相当頭に来たようだ。
このままでは調停どころではなくなると思った僕は、強引にでも2人を止めようとした・・・が。
「さようでございますか。では我々は邪魔になる前に失礼させていただきます。
どうぞごゆっくりお楽しみください」
あろうことか案内役の人はそう言うと、僕を引っ張ってさっさと部屋を出て行ってしまった。
閉ざされた扉から豚男の醜い悲鳴が聞こえてくる中、僕は案内人に事の真意を訊ねた。