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胸に秘めた思い
官能リレー小説 - 同性愛♀

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胸に秘めた思い 10

複雑な心境になりながらも鍋に塩を入れる。
計量して入れていたら男っぽくなるのを防げただろうか、などと考えてガラじゃないなと思い直す。
適当に塩を入れて、菜箸でかき混ぜる。
「たまにかき混ぜてね」
みずきにそう伝え菜箸を渡し、私はフライパン係へと戻る。
戻ったのはいいのだが、かき混ぜる道具が無い。
みずきから奪うのも面倒なので木べらに持ち替えフライパンの中身を蹂躙していく。
始めは必死に形を保とうとしていた具材たちが疲れ果てた頃合を見計らい、味付けに取り掛かる。
と言っても、ケチャップをこれでもかとかけるだけなのだが。
ドバドバかけて味を馴染ませつつ、パスタの茹で上がりを待つ。
本当は少し茹で過ぎくらいがちょうど良いのだが、先程から菜箸で鍋をつついているみずきを見るに、そろそろ鍋も限界だろう。
そう結論付けた私は、汁気を飛ばしつつ麺を柔らかくするという天才的発想を具現化せしめんとすべくうんたらかんたら。
難しい事を考えるのはよそう。
結局2〜3回鍋をつついただけのみずきが名残惜しそうに見ている中で、私はパスタをフライパンへと移し替えた。
あとはフライパンの中で肌色が朱色に染まるように、心行くまで輪姦してやればいいだけ。
「混ぜてみる?」
「え、いいの?」
「勿論いいよ。お皿出しとくね」
非常に物足りなさそうな顔をしていたみずきに晴れ舞台を用意してみた。
若干心配ではあるが。

背中に意識を集中させながらの食器段取りは思いのほか大変である。
スピーディーに準備を済ませると、菜箸をグーで握り、ぐるぐるとかき混ぜているみずきの姿があった。
…悪くない。決して悪くはないのだけれど…っ!
「な、なにその子どもみたいな持ち方っ」
思わず吹き出してしまった。だって可愛すぎる。
想像してみてよ。たまねぎでまだ目がうるうるしたままなのに、真剣な表情でフライパンをいじくりまわしている女の子がいる自宅のキッチンを。
やばいわーお姉さんイチコロだわー。もう嫁に来いっ!
「だってよく見えないし…」
目がうるうるしてるから今にも泣き出しそうな顔に見える。
何だか嗜虐心がくすぐられるぞー?
だがここは我慢だっ!嫌われてしまっては元も子もなぁいっ!!
「うん、良さそうだね。後いいよ。ありがと」
それだけ言って菜箸とフライパンを受け取る。
分からないようにパスタとソースをこっそり絡めながらお皿に盛りつけていく。
粉チーズかけてもいいな、緑色が無いからピーマン入れても良かったななどと考えながら盛り付けを完成させた。
うん。我ながら良い出来。
「はい完成ー!召し上がれー」
「おいしそー!いただきまーす」
「どうぞー」
そんな元気なやり取りをしつつ、フライパンを水で浸しておく。
こうすることで焦げ付きを防ぎ洗い物を楽にするのだ。
ついでに粉チーズをテーブルに持って行き、椅子に座る。
「もぁりまほー」
詰め込みすぎに思わず笑いながら注意してしまう。
「食べながら話さないっ。それじゃ私もいただきます」
「はーい」
食事を促す返事か注意に対する返答なのかどちらとも付かぬ言葉をみずきが発したので、お言葉に甘えてフォークをパスタに挿入した。
うん。おいしい。
塩コショウで味を調えそびれてしまったが問題ないようで安心した。

いくつかの失敗は胸にしまっておく事にする。
あ、そういえばトマト缶使わなかったから戸棚にしまっとこう。
「それにしてもおいしいねー? これならいつでもお嫁に行けるよー」
「さっき男みたいって言った……」
「まだ根に持ってるのー? しつこい男は嫌われるよ?」
「また言ったぁぁ!」
「あははっ! 冗談だよ冗談っ」
パラパラと粉チーズをかけながらみずきが釈明する。
世の中には言っていい冗談と悪い冗談と言うものがあってだねー。
「やっぱおいしー! ゆうさん天才!」
「えっ、そう? そうまで言われると照れちゃうなー」
何だか騙されているような気がするが気にしない事にした。
そんなこんなで楽しい(?)団らんをしながらの食事タイムは瞬く間に過ぎていった。
「ごちそうさまー」
「ごちそうさまでした」
ほぼ同時に食べ終わり、二人とも手を合わせて食材に対する感謝の意を示した。
食べ終わるのがみずきより遅かった事を少しだけ悔やむ。
いや違う。負けず嫌いなのではない。おいしいものは温かいうちに頂くのが理想であり、それが食材に対する最大級の贖罪であると考えている! そう、そういう信念なのだ!!
「洗い物は私がするねー」
本当に出来るのかっ!? 思わず突っ込みたくなるが、折角のありがたいお言葉には遠慮なく甘えさせていただこうと思う。
「うん。ありがと。じゃあ何か飲み物用意するね」
ここで催淫剤でも混入すれば完璧なのだけれど……って、さすがにそれは犯罪か。
「オレンジジュースとサイダーとアイスティーあるけど、どれがいい?」
粛々と、と言うよりシャコシャコと洗い物を始めたみずきに声をかける。

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