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胸に秘めた思い
官能リレー小説 - 同性愛♀

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胸に秘めた思い 8

飲み始めた時点で量が少なかったのだから当たり前か。

席を立ってお互い会計を済ませると、どちらともなく外に出る。
陽が傾きかけ、何もせずとも眩しい時間帯だ。
ふと横を見ると、みずきは眩しそうに夕陽に手を翳していた。
左手首に銀色の腕時計。
シンプルなデザインのそれは細い手首に似合っていて、みずきのセンスの良さが窺える。
「あっついねー」
誰に言うでもなく、つぶやくように吐かれたその言葉に頷いていると、みずきが着ているYシャツの胸元を少し開けていることに気付く。
そのデコルテがあまりにも扇情的で、みずきが胸元を手で扇ぐ度に無意識に息を飲み、しばし同性である事を忘れ目を奪われてしまった。
「ん?」
私が凝視しているのに気付いたようだ。
始めは首を傾げ不思議そうな顔をしていたが、目線に気付くと徐々に顔が羞恥に赤く染まっていく。
私が見なければこんな事態には陥らなかったのだけど、ついつい見てしまうほど魅惑的なのがいけないのだ、と自らを正当化してみる。
「み、見すぎぃ」
みずきが見すぎとな!?
「ごめんごめん。どんな可愛い下着をつけているのかなって」
照れ隠しに笑って誤魔化すが、誤魔化しきれているのかは自分でもよく分からない。
「おやじかぁっ」
ポコンと頭をチョップされてしまった。
ういやつじゃのう。

が、しかしすぐにそっぽを向かれた上にボタンもしっかり留められてしまった。

仕方がないので自分の胸元を大きく開けることにした。
歩く度に風が入り込んでなかなかに涼しい。
みずきがチラチラと見てくるので「フフン」と勝ち誇ってやった。


道行く通行人の目が気になってこっそり元に戻したのは言うまでもない。
そんなよく分からないバトルを繰り広げているとスーパーに着いた。
えっと確か、ナポリタンの材料を買いに来たんだっけ?
使うのは――。
「ゆうさんってケチャップ派?トマトピューレ派?」
はははは派。
「ある方使うよ」
「ほぇー、じゃあ普段からけっこう料理してるんだっ?」
興味津々と言った表情で顔をのぞき込んでくる。
「そうでもないよー。気が向いた時だけね」
「私全然出来ないから憧れちゃうなー」
確かに苦手そうだ。
「楽しみ楽しみー」
フンフンと鼻歌を歌いながら、いつの間にか持ってきていたカゴをぶらぶらさせて店内をうろつくみずき。
魚コーナーの冷凍さんまを見て目を輝かせているが…流石にそれは使わない。
「じゃコレとコレとコレ」
たまねぎ、にんにく、ベーコンと適当に食材をカゴに放り込んでいく。
念の為トマトの缶詰も買っておこう。ケチャップくらい家にあるはず。
「辛いの平気ー?」
赤唐辛子が目に入ったので聞いてみた。
「だいっっすき!!」
予想外に辛いのがお好きらしい。これも購入、と。
ある程度頭の中でシミュレートしつつ、他の具材を買い込んでいった。
みずきがあちこち興味を持つので少し時間がかかってしまったが、無事レジに並ぶことが出来た。
料理が失敗する可能性を視野に入れて会計は全部私持ちにしようと思っていたけど、みずきが「せめて半分にしよう!」と言って聞かないので仕方なく折半することにした。
ナポリタンが大失敗したらお詫びに何か奢ることにしよう。
そう決めてエコバッグ片手に家への道を歩く。一応お客さんだしってことで、買い物袋を持つ係は死守した。
「暑いし扇いであげるね」
そう言われてどこからか出してきた団扇を常に向けてきた時は吹き出してしまったが。

笑ったことを割と全力で怒られた。
しかしだ、しかしだよ?
買い物袋を持っている女を扇ぐ女って構図はどう考えても笑ってしまうと思うんだ。
ハタから見たらシュール以外の何物でもない。たぶん。
それでも本人は大真面目だから、それを言うのには気が引ける。
妙な葛藤に苛まれているうちに家が近づいてきた。
我が家は大きくはないが一軒家なので自分の部屋がある。それを考えると私は恵まれているなと感じる。

友人の話を聞くと、自分の部屋がないだとか、勉強机がないだとか、家がないだとか、皆大変そうだと思う。
家がないというのは冗談だけど。

そんな訳で、みずきと部屋に籠もればゆっくり話が出来るなー、と考えつつ玄関を開けた。

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