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胸に秘めた思い
官能リレー小説 - 同性愛♀

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胸に秘めた思い 7

みずきはストローだけ手に取り開封すると、コーヒーに差し込んで飲み始めた。
「ブラック派なの?」
「入れるときと入れないときがあるよ」
一口飲んでからガムシロップとポーションミルクを手で弄びつつ答えてくれた。
私も弄ばれたいっ!
むしろ弄びたいっ!
みずきの手元を見てそんなことを思っていた。
「ゆうさんは?入れる派?」
一瞬タチかネコかを聞いているのかと思って焦ってしまった。
「あーうん!ガムシロだけ入れる派」
ごまかすために語気が強くなってしまったが、何とか持ち直す。
アイスコーヒーにガムシロップを入れると味わいが深くなるのだ。
何も入れないよりも使っている豆が分かりやすくなる。
決して苦いのが苦手とかそういう訳ではない。

これに使っているのはコーヒー豆。そうに違いない。



通ぶりましたごめんなさい。
コーヒー豆の産地から、これから行く場所へと思いを馳せる。
暑い場所より涼しい場所がいいかな。
だとすると…ボウリング、カラオケ、ゲーセン、ほ…ほてる、とか?
いや、最後のはないな。
だって家に呼んだんだし。
「どこか行きたいとことかって、ある?」
手の上でガムシロップ達を転がすのに飽きたのか、ストローの袋で遊んでいたみずきに声をかける。
「んー、特には無いかな」
吸い込まれそうな瞳で目線を合わせられるとこちとら心臓バックバクですよ姉さん。
同い年だけど。
「ゆうさんは無いのー?」
微笑を浮かべながら問い掛けてくるみずき。
下心を見透かされているような気分になるのでやめて頂きたいが、その表情を見ていたいのでもっとやって下さいとも思う。
「時間も時間だし、夕飯が食べられるとこがいいかな」
本当に食べたいのはみずきちゃんだけどねっ!
「夕飯かあ…」
そう言ってみずきはどうやら空想の世界に旅立ったようだ。
空想の世界で食うそうだ。
そんなばかな。
「食べたいものある?」
今度は質問を変えてみた。
「ナポリタン」
そうだよね、いきなり言われたって答えられないよね。
「あれー?」
「どうしたの?」
「ナポリタンって、ナポリタン?」
「他にどのナポリタンがあるのー」
あまりにも唐突な、いや自分が聞いたんだけど、あまりにもあっさり答えられたので逆にこっちがびっくりしてしまった。
それにしても、ちょっと困ったような、呆れたような笑顔で見つめてくるのでハートが鷲掴み状態です。
「じゃあ、行きつけのお店とかあったりするの?」
きっとナポリタンフリークに違いない。
顔に似合わず色んな店行っては、こんな不味いもんが食えるかーっ!ってやってるに違いない。
「ないよー、そんなの」
「好物ってわけじゃないの?」
「うん。急に食べたくなっちゃって…作ってくれる?」
最後だけ囁くような声で言ってくるので、何でもないのに秘密を共有したような感覚に陥ってしまう。

しかし、ナポリタンかあ…作れるかな?
「あっ、無理だったらいいよ?ちょっとした冗談だから…」
みずきの表情が曇る。
「いえ。作りますとも!是非作らせてください」
「ぷふっ…なんでそんな乗り気なの」
思わず吹き出してしまって、手を口にあててそう言うみずき。
私はみずきが笑っているのを見るのが好きだ。
一日中見ていても苦じゃないだろう。



残念ながらこれは嘘じゃない。
「でも、材料ある?」
「ない、かも」
記憶から冷蔵庫の中身を引っ張り出すも、大した物が入っていない。
「そしたら買い物いこー」
やけに嬉しそうに言う。もしかして買い物が好きなのだろうか。
思案していると、ストローでグラスをかき混ぜるカランコロンとした音が耳に入ってきた。
視線を遣ると、みずきが待ちきれないのか、コーヒーを凄い勢いでちゅーちゅー吸っているのが目に入ってきた。
そんな飲み方でむせたりしないだろうかと少し心配になったが、私も負けてられない。
負けず嫌いなのではなく、コーヒーを飲むのをじーっと見つめられながら待たれるのに耐えられそうにないという理由である。
断じて負けず嫌いなのではない。

飲んでみると意外とむせないものなんだな、などと思った。
勝敗はもちろん、私の勝ちだ。

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