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胸に秘めた思い
官能リレー小説 - 同性愛♀

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胸に秘めた思い 6


「こちらへどうぞ」
そう言って案内された席は、西日が緩やかに射し込む窓際だった。
「はい、どうも」
一応お礼を言って席に着く。
背後に店員の離れていく足音を感じたので窓の外に目を遣ってみる事にした。

みずきはまだかなー。
交差点を横切る車が光を反射して目を眩ませる。
みずきを見逃したらどうしてくれるんだ。
そうして目を凝らしていると、ふいに肩を叩かれた。
肩叩き券を使った覚えはないけど…。
「って、うぇぇ!?」
どっから出てきたのこの人!?
「そんな驚かなくても…」
苦笑いで声をかけてくる待ち人…いや、私が入ってからは誰も入店してないから…待たれ人?
「ばぁって言いそびれたじゃん」
そう言いつつ微笑みながら私の頬っぺたをつついてくるみずき。
はっ、いかんいかん。つい見惚れてしまう。
しっかし、何でこうも私の好みなんだろう?
顔もさることながら動作もだ。
細かい仕草がどうにもツボを刺激するようで、正直たまんないっす!
「なぁに?そんなに私の顔じーっと見て。何か付いてる?」
顔は笑顔のままだけど、声色に少し不安が混ざった気がした。
「んー化粧直し、した?」
昼より化粧のツヤが良いような、そんな風に見受けられる。
「うん。ここのお手洗いでちょっとだけ」
そこで私は致命的な間違いに気付いたのだ。
そう、私もここで化粧直しをすれば良かったのだと!
「だから店入って来たとき見かけなかったのかあ」
「店員さんに案内された時点で気付くでしょー」
確かに。こちらへどうぞって言われてた。
「盲点でした…」
そんなやり取りをしていると、さっきの店員さんが音もなく近づいて来る気配を感じた。
本当に何者なんだろう。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「わっ、と。コーヒーでいい?」
すかさずみずきが聞いてくる。
「うん。いいよー」
「じゃあ、コーヒーふたつで」
「ホットとアイスがございますが、どちらに致しましょうか?」
ぬるめが欲しい。
「じゃあ私はアイスで」
今度は私が先手を打った。
この速さに付いてこれぬとはまだまだよのう。
「私も」
「かしこまりました」
静かに去っていく店員さん。
教育が良いのか、はたまたとんでもない組織の一員なのか、妄想が…別に膨らまない。
「それで、これからどうするの?」
少し身を乗り出してみずきが尋ねてくる。
どうしようかな。
いきなり家に連れ込むというのも芸がないだろうか?
「デートする?」
で、でぇとっ!
なんという甘美な響き!
「ぜひぜひ」
反射的に口を衝いて出てしまったが時間的にはどうなんだろう。
ふと腕時計に目を遣る。
五時半になるかならないかぐらい。
コーヒーを全力で飲み干して六時くらいだとしても…結構厳しいかな。
門限とかあるのだろうか。
「何時まで大丈夫?」
一応聞いておこう。
「んー…魔法が解けるまで?」
ご冗談を。
「ご冗談を」
ついうっかり思っていることを声に出してしまっていた。
「ひどっ、結構イイと思ったんだけどなぁー」
本当に魔法がかかっていても困るが。
「ぷっ…十二時までね?」
「べっつにっ。もっと早くてもいーけどー」
まずい。シンデレラの機嫌を損ねてしまったようだ。
「どうやって魔法にかかったの?」
「んーと、昨日のコレ、かな?」
みずきはそう言い唇に指を当てる。
キス、と言いたいのだろうか。
「それって―」
言いかけたところで忍者、もとい店員さんがアイスコーヒーを持ってやってきた。
「お待たせしました」
忘れていました。
トン、トンと小気味良い音を立てて静かに置かれるグラス二つ。
そのまま流れるような手付きで置かれるストロー、ガムシロップ、そしてポーションミルク。
「ごゆっくりどうぞ」
言葉の最後に一礼を付け加えて忍者…女性だからくノ一かな?は去っていった。
「のもっか」
少しだけ首を傾けて笑顔で問いかけてくるみずき。
首の動きにつられてふわふわと髪の毛が揺れ、思わず見惚れそうになる。
「うん」
何とか堪えて、それだけ紡いだ。

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