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胸に秘めた思い
官能リレー小説 - 同性愛♀

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胸に秘めた思い 5


「ごちそうさまでした」
どうやらみずきも食べ終わったようだし、食器をまとめて下げ台に持って行こうかな。
「あ、私持って行くよー?」
「え、じゃあお願いしちゃおっかな」
特に断る理由も無いのでお願いしてみた。
でも持ってくる分のお金貰ったことになるからいくらか払った方がいいのかな?
「あれ?行かないの?」
ちょっと悩んだだけだったのに…意外とせっかちさんなのだろうか。
「いくいくー」
まあいいか。
帰りに聞いてみることにしよう。
「じゃあまた後でね」
「うん後で」
みずきが食器を下げ終わってこちらを振り向き、笑顔でそう言うもんだから、こっちもつられて笑顔で返すしかないよね。

あー午後憂鬱だけど楽しみで困る。

昨夜の放心ぶりは何だったのかと言うくらいに浮き足立っていて、気が付くと何事もなく時が過ぎていた。
男Aがやたらとまとわりついてきたような気もしないでもないが、特筆すべきことは何もない。

やるべき事をあらかた終え、時計を見る。
四時半、か。
今日は他に予定は無かったはずだし、このままいけば五時くらいには帰れそうかな?
みずきはどうだろう?
そう思った直後、携帯のバイブレーションがメールの訪れを告げた。
以心伝心、愛の調べとでも言ってみようかグフフ。

どうやらみずきもそれくらいで終わるらしい。
五時くらいには帰れそうだよ、に笑っている絵文字、続けてそっちはどう?と書いてあった。
勿論クエスチョンマークは絵文字で。

こっちもそれくらいの予定だということを含め、近くの喫茶店で待ち合わせしたい旨を綴り返信した。
こんな表現すると何だか私文豪みたい。
思い違いも甚だしいけど。

机を片付け、帰り支度に取り掛かる。
携帯電話だけをポケットに入れ、あとは全て鞄に詰め込む。
あ、化粧直しておいた方がいいかな?
これから帰宅だと言うのに不審に思われないだろうか、なんて思いながらトイレに行くと、すでに先客がいた。

そうだよね。アフター5なんて言うくらいだから、このタイミングで化粧直ししている子の方が多いよね。
何かイケナイコトをしているような気分になっていて、普段通りの思考が出来なくなってるみたい。
あまり力入れて遅れるのもアレだし、ファンデーションだけにしとこうかな。

化粧戦略を考えていると、先客が鏡台から離れた。
よし、気合入れて…いや、軽めにファンデーションを塗りたくろう…。

一度気になり出すと止まらないもので、気付けば結構な時間が経過していた。
いけない。これは全力でダッシュしないと間に合わないかも。
私はトイレを出て、大して人のいない通路を人の間を縫うように駆け抜けて行った。
さながら蝶のように舞い、蜂のように刺すといったところか。
いやそれは違うか。

結局、汗をかいてメイクが崩れるという本末転倒な事態に陥ってしまった。
モデルは首から上に汗をかかないなんて言うけど、そんなことが可能なものか。
額からかくっちゅーねん!

汗をさりげなく拭き取りながら喫茶店内に入る。
入り口に設置してある冷房の風が気持ちいい。
汗をかいたからか、余計に涼しく感じる気がする。
風邪をひかないように気をつけなければ。
風だけに。


思う存分浴びていたいと思うが、色々な意味で寒いのでやめておこう。
「いらっしゃいませ。おひとり様ですか?」
音も立てずに店員さんが近づいてきていた。
貴様ァ!なにやつじゃ!
驚きのあまりそんな事を口走りそうになる。
そんな自分に驚いた。
「待ち合わせしてるんですけど…」
そう言いながら店内を見渡す。
どうやらみずきはまだ来ていないようだ。
なんで走ってきたんだろう私。

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