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スケイルス海での出来事
官能リレー小説 - 同性愛♂

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スケイルス海での出来事 3

「どうかしたっていうんだ?…ノックもせずに…」
レルツは自分よりも若い兵に向かい、徐に眉をしかめた…
もちろん謎の暗雲のことは気にはなったが、この自室は船の中での唯一のプライベート空間…その領域に突然に入っては来て欲しくない…それはレルツでなくとも、若い男なら誰もが分かることだろうと思えた…

しかしそんな悠長なことを言ってはいられない程、自身の身に危機的状況が迫っていようとは、この時のレルツは何も分かってはいなかった…

「逃げた方がいい。おかしな船だ」
兵士の叫びにレルツは外に飛び出す、指示をする者が居なくなってしまうが仕方がない。
この船はあまりに人員が足りなすぎる。

暗雲の中にうっすらと見えるのは箱形の古そうな船だった。この輸送艦をふた回り大きくした感じだ。
ただ、暗雲をまとっている事を抜きに見ても雰囲気がおかしい。

海賊か?…
この海域で海賊に襲われた話しは聞いたことが無かった。
故に軍も油断し、その備えは全くしていないと言ってよかった。
しかし海賊が自分たちの縄張りを広げてきたことは充分に考えられる…

こんな状況で、あの暗雲がもし海賊だったとしたならば、食糧物資を奪われることはもちろん、自分たちの命も危うい…
この船で生き残れるとしたら、船底の屈強な身体を持った漕ぎ手の男たちだけで、自分を初め兵士たちは皆、マストから吊し首にされるか、もしくは鮫の餌にされるであろう…

船を眺めるレルツの背中に、厭な汗が流れた…


海賊は兵士に良い感情を持っていない。
この船が軍の輸送船だということは彼らの怒りを誘うに違いない。
ただ、相手はヨタヨタ蛇行しながら付いてくるだけでこちらに対してなにもしてこない。
船首に武器が無いのも気になった。
しかし、近寄らないに越したことはない。全力で前進をする。
それでも距離が縮まることは無かった。
大きさが違い過ぎる…
あっちが大人なら、こっちはまるではいはいを始めたばかりの赤子のようだ…
「ど、どうします?…」
無遠慮に部屋に入ってきたあの兵士がレルツに詰め寄る…
(そんなこと…俺だって分る訳ないだろ…)
心中でそう呟きながらも、上官である自分がそれを口に出すことなど出来る訳もない…
レルツは甲板に呆然と立ち、暗雲立ち込める巨大な船をただ見詰めることしか出来無かった…

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