無法学園 32
(肥った奴には短小が多いというが..そんなことは全くの偽り言であると、この少年といい、樋口泰夫といい、謀らずとして証明する形となったな・・)
校医は片頬を上げ、井上大輔の股間をまじまじと見つめていた。
そもそも肥った男が小さいと言われるのは、大きな身体とのギャップであって、ちゃんとサイズを測れば普通体形の男と大差はないのだ。
もちろん肥った男の中にも短小もいるし、巨根もいる。
ペニ○のサイズは体形には関係ないのだ。
そういった意味では、井上大輔は確かに巨根だった。
それは自分よりも10才以上も年下のガキが持っているには、勿体無いと思えた。
「せいぜい役に立てんだな・・」
校医はどこか面白くなさそうに、ピン!とそれを爪で弾いた。
一方、地上に戻った遠野はこれから来る会員を待っていた。
たが落ちつきが無く腕時計をちらちらと見ては、いらついていた。
それは当然、五十嵐修のことが気になっていたからだ。
そもそも遠野は、樋口泰夫という男が苦手だった。
肥えた体形にセンスの無い服装、経験よりも理論で語ってくるそのオタク的な気質は、サッカーで汗を流してきたスポーツ青年の遠野とは合う筈も無かった。
そんな樋口泰夫に五十嵐修がどんな性儀を受けているかと想像するだけで、気が気ではなかったのだ。
(早く来いよ、全く・・)
遠野はせわしなく足を揺すりながら、宮本誠一郎というVIP待遇会員が来るのを、今は遅しと待っていた。
やっと遠くから、校長に連れ立って歩く男の姿を遠野は捉えた。
(やっと、お出ましになったか…VIPさんよ…)
遠野は腰を上げると、直立不動の姿勢を取った。
この学園内で、VIP待遇の会員はそうはいなかった。
政界でもそれなりの地位を持った者か、もしくは皇室関係の面々、或いは余程の権力と財力を兼ね備えた著名人にしか、VIPの待遇は許されてはいなかったのだ…
宮本誠一郎は世界的にも有名な芸術家の先生だと聞いていた。
しかし、サッカーにしか興味のない遠野は、そんな名前など知る由もなかった。
それでも、宮本誠一郎という男は只者ではないのは遠野にも分かっていた。
今夜、あの男の為に夕食の催しが開かれるのだ。
そんな会など、年若い遠野がこの学園に着任して来てからは、初めての事だった。
目の前に来た宮本は、芸術家先生と呼ばれる割りにその容姿は若く、遠野はどこか安堵した。
「お待ちしておりました。宮本様。」
遠野は目一杯の作り笑顔で深々と頭を垂れる。
「ほぉ〜これはこれはギリシャ彫刻のような逞しい若者ですな。」
宮本の声は深く落ち着いていた。
横から校長が声を挟む。
「今晩、宮本様のエスコート役を勤める遠野です。煮るなり焼くなり、どうぞお好きになさって下さい。」
「ははは。私にその趣味はありせんよ。今日は肉付きのよい少年をデッサンさせてもらうだけですから・・」
(へ?ゲイじゃないの?それに地下でハードプレイをすんじゃないのか?)
遠野の心中は『?』でいっぱいになった。
そんな遠野の耳元で校長が囁く。
「宮本様には男との趣味はないそうなんだ。ただ今日は画家として、犯されながらも恍惚の表情を浮かべる少年を描きたいとの御所望だ。」
「はい!」
「遠野君も粗そうの無いように、くれぐれも腑甲斐無い姿を見せないようにな・・」
「は・・・はい・・」
校長の言う『腑甲斐無い姿』とは何を意味するのか分かり、遠野は自分の股間に視線を落とした。