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ソノン闘技場の出来事
官能リレー小説 - 同性愛♂

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ソノン闘技場の出来事 10

固く握られた拳が、引き締まった腕という弓から矢の如く飛んでくる。
並みの闘士であれば、その一撃でもって命を奪われていても可笑しくはなかった。
だがマキシはその拳撃に沿うように体を流すと、手首と肘を持って投げ飛ばしてしまった。
空中で身を丸めたオーブリーが、追撃を警戒しながら地面を転がっていくなか。
改めて構えなおしたマキシは、仕切り直しだとでも言うようにオーブリーと向かい合っていた。
「あぁ、すまなかった。思いもよらない事だったのでな……」
素直に謝罪をするマキシの姿に、対面のオーブリーは肩をすくめてみせた。
「お前を狙う相手にわざわざ謝るのかよ…」
オーブリーは調子が狂ってきた。奇妙な色に光るクリスタルの事も気になる。
あれが光りだしてからマキシの動きが乱れてきているのは明らかだった。オーブリーはこのまま押しきろうと考え、積極的に動いた。
石畳を砕く踏み込みから、相手の懐に入り込む。下手な揺さぶりは的にされると考えた、無拍子での詰めだ。
顎に肘でのかち上げを放ちながら、背撃で動きを止める。
僅かな隙間で体を回転させ、腹を打ち抜く槍の如き蹴撃。回転を止めずに肩を砕く踵落としで追撃を入れた。
「しぃいぃぃっ!!」
反撃を許さぬ連撃を浴びせながらも、オーブリーはまったく油断できなかった。
肉や骨を砕いたはずの手ごたえが無く、まるで鋼鉄を相手にしたように痺れが残っていたためだ。
反撃を恐れて飛びのくと、マキシはゆったりとした動きで体を動きを確かめていた。

「いやぁ、凄まじい攻めだな。受けると決めていなかったら、今ので決着が着いたかもしれない……」
打撃を受けた場所が赤く腫れていたが、逆に言えばそれだけしかダメージが通っていないのだ。
「化け物かコイツ…」
オーブリーは流石に気味が悪くなってきた。うろたえているとマキシがじりじりと下がり始めた。
「逃げるのか?」
そうは言ったがオーブリーには何となくわかっていた。逃げるのではなくどこかに向かおうとしていることに。
「悪いが事情が変わってな。この試合、そちらに預けるぞ! ……先ほど受けに回ったのは、慰謝料代わりと思ってくれよ?」
そう言って出入り口まで下がると、マキシの姿は廊下の暗闇へと消えて行った。

他の試合であれば闘技場としても、逃亡による負けと判断しただろう。
だが此処で行なわれる闘いは、中断すら認められる決着のみが終了条件のものだ。
オーブリーは一瞬安堵してしまった自分に屈辱を覚え、次は必ず打ち倒すと覚悟を固めていた。

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