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小さな村の秘薬
官能リレー小説 - 時代物

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小さな村の秘薬 1

森の中にある小さな村の外れに、その廃屋はあった。
木々の間から見える古びた建物は、まるでこちらを見下ろしているようにも見えた。
そこに住み着いた者たちが居た。褌だけを纏った筋骨隆々の鬼達だ。
彼等は日頃から村人達を襲っては食糧を奪い、家を破壊して回っていた。
そんな彼等だったが、ある日を境に突然村に寄り付かなくなった。

鬼の名を悪鬼といった。
親のつけた名ではない
物心ついた時には親はいなかった
彼はその醜悪な外見から捨てられたと思っていた
地震、干ばつ、疫病。自分には身に覚えのないことでさえ鬼である自分のせいだとされた。
ある日彼は鬼として生きることを決めた。
自分を追い回した人々に反撃をしたのだ。
鬼は強かった。一撃で人を倒せることを彼は知った。

しかし、今彼の横には似つかわしくない、童女の姿があった。
彼女の名は「桃太郎」といった。
彼女は鬼に告げる。
「都にくれば仕事があるよ。鬼は人を倒せる権利があるの。」

鬼にはそれが嘘とは思えなかった。
だが、鬼は断った。
「俺はここを出る気はない。ここで人間と暮らすんだ」
「それは無理だよ。鬼は人に嫌われてるもん。皆貴方のこと怖がってるわ。貴方は人間に反撃をしたから、次はきっと人を殺すと恐れられているんだよ」
童女の言うことはもっともだった
しかし鬼は諦めなかった。逆に問う。
「ならばお前はどうなんだ?なぜ俺と一緒にいる?」
そう聞くと、童女は少し考えて言った。
「私はね…鬼が持つ力に興味があるのよ」
童女の視線は鬼が締めている白い褌に注がれていた。
肝心の鬼はというと、童女の視線がそこに注がれていることに気づいていなかった。
そして童女はこう続ける。
「鬼の持つ力は人にはない特別なものなの。以前、ここに貴方の同族がたむろしていたの。貴方がここに住み着くようになる直前の話よ。彼等も貴方と同じく迫害されていて、力もあったわ」
「それでこの廃屋に寄り集まっていたのか」
「そうよ。でもね…ある夜、その彼等の溜め込んだ力は暴走しちゃったの。同族が集まり、力と力が反応し合って増幅していった」
「それで彼等は村人に殺されたのか」
「違うわ、私がこの水晶に封印したのよ」
桃太郎と名乗る童女は小屋の角に置かれた木箱を指差した。鬼が開けてみるとそこには、手のひらより大きな水晶がいくつも入っていた。
恐らくは封印された鬼の人数分であろう。強大な力を感じた。
「俺もこの水晶の一つとなるのか」鬼は覚悟を決めたような表情をしていた。
「わからないわ。貴方の溜め込まれた力がどのように作用するか私にも分からないの、封印しなければならない事態にならないように祈ってるけど…」
そう言いながら桃太郎は不安そうな顔を見せた。

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