あてがい女 斡旋します 1
あてがい女
それは長子相続が一般であった世の中で無事男児が生まれるよう親が自身の息子に性教育の一環として女をあてがい経験を積ますことである。
これは身分の上の者が暗黙の了解のもと行っており、大ぴらに言うものではなかった。
十五で成人とされる中それが行われるのは必然的にその前であり、早いものは七節句の夜に。だが普通は十になってから行うのが不文律であった。
一方あてがわれる女の方はというと、相手の男児と年回りの同じ女児の場合や出産経験のある三十路を過ぎた未亡人であったりと当人にとっては当たり外れが激しいものであった。
そしてこの男、吉田 権兵衛は孤児や未亡人の女性を多数囲い込みあてがい女として斡旋する事を生業にしていた。
そして今宵も一人のあてがい女がある屋敷の敷居を跨いだ。
「いらっしゃいませ」
「お世話になりやす」
出迎えた男は四十代後半といったところか。顔立ちは整っているものの、どこか疲れているように感じられた。
「ではこちらへどうぞ」
通されたのは四畳半ほどの小さな部屋だった
そこには布団が敷かれており、枕元には西洋風の水差しが置かれている。
それに入っているのは水や茶ではなかった。いかにも妖しげな濃い紫色をした液体だ。
あてがい女の名はりよといい、まだ十四になったばかりだ。
りよはその液体がウネウネとうごめく様を見て顔を青くする。
そんな彼女の様子に気づいているのかいないのか、男は何も言わずに着物を脱ぎ始める。
男の裸体が露わになる。服の上から見ていても分かるほどに鍛え上げられた肉体美であったが、脱ぐとその凄さがより一層際立つ。
まるで彫刻のような筋肉。それが目の前にあるのだ。
だがそれよりも水差しの中の異様な液体の方が気になって仕方がない。
「やはり気になりますよね」
着物を脱ぎ終わり、褌のみを身に着けた少年がりよに話しかける。
「南蛮渡来の媚薬で効果は保証されているそうです。」
それはそれは強力な媚薬であると。
しかし使用するのは元服前の未熟者、粗相があり家の恥を晒すことは許されないと暗黙の了解の元、家から家へと回ってきたもの。
今回のあてがいが元服間近にずれ込んだのは少年より上の家と期間がかぶり入手に時間が掛かったためであった。