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爆乳☆陰陽伝
官能リレー小説 - 時代物

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爆乳☆陰陽伝 2

葛葉の見事な黒髪は見る間に色が消えて新雪のような純白となり、頭にはピョコンッと狐の耳が生えた。
「う…うわあああぁぁぁぁぁっ!!!?」
突然の事に晴士は腰を抜かし、悲鳴を上げながら尻餅を付いてしまった。
「う〜む、やはり人間はこの姿を見ると驚くんじゃのう…。幼き日の晴明にもこの姿を見られて思いっきり泣かれてしもうた…あの時は結構傷付いたものじゃが…ま、今となっては良い思い出じゃ」
当の葛葉は割と平然としている。
「ああ…それとな、あの伝説は後世の人間によってかなり改変されておるぞ。妾は保名に命を救われてなどおらぬ」
「…へ?そ…そうなんですか…?」
いや、今はそんな事はさしたる問題ではない…と晴士は思った。
それより何より目の前の女が本物の葛葉姫だったという事の方がずっと驚きだった。
そもそもその実在すら疑われていた存在なのだ。
それがまさか自分の目の前に現れるだなんて…。
そんな晴士を余所に葛葉は続ける。
「うむ…そもそも最初、妾は保名を喰ろうてやろうと思っておったのじゃ。じゃが返り討ちに遭ってしもうてのう…調伏されるか式神になるか選べと言われ、泣く泣くヤツの式神となったのじゃ…ま、式神として仕える内にヤツの事を愛してしまい、結果として晴明を授かった訳じゃがのう…」
「そうだったのか…」
「…うむ、そして保名の死後、妾はその骸(むくろ)を美味しくいただいた」
「へ…っ!!?」
晴士は固まった。

古来、人や獣を問わず霊力の強い者の肉を食すと、その者の持つ力を得られると言われている。
だから鬼や妖(あやかし)は僧侶、神官、陰陽師などを好む(食物として…)。
もっとも、この葛葉のように返り討ちに遭う事も少なくないのだが…。

呆然とする晴士に葛葉は言った。
「何を驚いておるのじゃ?生きておる間は主人として仕える…その代わり死後にはその屍を好きなだけ喰らわせて貰う権利を与えられる…式神とはそういう物じゃろう。お主も安倍一族の端くれで陰陽師を志す者ならば知らぬ訳ではあるまい?」
「し…知りませんでした…」
そもそも式神を使える陰陽師の方が珍しいのだ。
「何じゃ…まあ良い。ときに晴士よ、先程も申したが妾はずっとお主に会いたいと思っておったのじゃ。お主の噂は風の便りに聞いておったでのう」
「どうせロクな噂じゃないでしょう?」
「ああ…晴明の曾孫でありながら霊力皆無とか、安倍一族の恥とか、これがホントの“零能者”とか…随分な言われようじゃのう」
「さ…最後のは知りませんでしたけど…。ハァ…でも事実ですよ。僕、曾お祖父様の血を引いてるのが嘘なんじゃないかって思えるほど全く霊力が無いんです…」
「いや、お主は間違い無く晴明の血を引いておる…なぜなら晴明もお主と同じく霊力が全く無かったのじゃからのう…」
「えぇ!!?う…嘘でしょう!?信じられませんよ!」
「信じられんじゃろう?しかし事実じゃ。あれを稀代の大陰陽師にしたは全て妾を始めとする式神達の力だったのじゃよ。…あ、ちなみに妾は保名の死後、晴明の式神となっておる。これも伝承には語られておらぬがのう…」
「そ…そんな…曾お祖父様が…いや、曾お祖父様も…!?」
「うむ、じゃからお主の話を聞いて無性に助けてやりとうなったのじゃ。実際こうしてお主を見ておるとあの可愛い愚息を思い出す…」
そう言うと葛葉は晴士に歩み寄り、優しげに頬に手を添えた。
ちなみに小柄な晴士と葛葉が並ぶと葛葉の方が頭一つほど大きいので見下ろす形となる。
「あの…それはつまり、曾お祖父様の…実の息子の死肉も食べたという事ですか…?」
「…もちろん喰ろうてやったわ。血の一滴まで残さずな…ま、あれの肉を喰ろうても何の力も得られなんだがのう。じゃが可愛い我が子の肉の味はまた格別であった。お主もあれに似て可愛くて美味そうじゃ…」
葛葉はゾクッとするほど美しい顔を晴士に近付けて囁いた。
「…で、どうする?」
「ふぇ…?」
「『ふぇ…?』ではない。お主も晴明と同じく妾を式神する気は無いか?と訊いておるのじゃ。…なあに、肉を喰らうと言ってもお主が死んだ後の事じゃ。魂の抜けた抜け殻をどうされようと構わぬであろう?それともこのまま一生“零能者”で生きていくか?」
「……」
晴士は一瞬だけ逡巡を見せたが、すぐに葛葉を真っ直ぐに見据えて答えた。
「私を・・・ナメないでください、葛葉姫。
 いかに零能者とバカにされている身の上とは言え、人を食らう妖(アヤカシ)と手を組むなんてあり得るはずがありませんっ!」
「ほう?ならばどうする?」
「知れたこと!命と引き換えにしてでも、あなたを封滅させるに決まっているでしょう!
 ましてあなたは私の先祖をたぶらかし、その死体を食らった妖(アヤカシ)!
 許せるはずがないでしょう?」

晴士はそう言うと懐から破魔札を取り出し、戦闘態勢を取った。
しかし札を向けられた葛葉姫は余裕の表情を崩さない。
それどころか着物の裾で口元を隠し、おもしろそうにコロコロと笑う。

「いやはや・・・何とも勇敢なことよな。
 妾を目の前にして、誘惑に屈さぬどころか、刃を向けてこようとは・・・。
 しかし・・・わかっておるのか?零能者の貴様など、妾の相手にもならぬということを。
 それともそれすらわからぬ愚か者か?―――ならばいっそのこと、この場で死んで、妾に食われるか?」

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