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影武者生活
官能リレー小説 - 時代物

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影武者生活 5

彼は部屋の中を見渡すと、吾作を見て口を開いた。
「お前が吾作か?」
「そうであるが」
咲が居るので殿口調で話す吾作。
「ふむ…確かに殿に生き写しの顔をしておるな」
「あなた様は一体どちら様で?」
「ああ、これは失礼。俺は殿の遠い親戚にあたる者で、名を源蔵という」
「遠縁とはいえ、殿の身内であらせられるお方。失礼の無いようになさいませ」
咲が吾作に注意を促す。
「承知しております」
吾作は頭を下げつつ答える。
「ところで吾作とやら。今、暇か?」
「へえ、まあ…」
「ならば手合わせ願いたいのだが?」
「はあ…構いませんが」
「そうか、それでは早速道場に行くぞ」
「分かり申した」
二人は部屋を出て道場へと向かった。
吾作は武術は苦手だったが、それらしく構えていれば何とかなるだろうと楽観的に考えていた。殿である自分に危害を加える事はないだろうし、万一の場合は咲が止めてくれるはずだからだ。
しかし、源蔵は武術より別の事に興味を示していた。
「なるほど…殿と瓜二つではあるがやはり中身は違うようだな」
「どういう事で?」
「例えば今の受け答え…殿であれば曖昧な返事はせぬ。もっとこう…キリッとした態度でハッキリと物事を言うものだ」
言われてみると、そうかもしれないと思う吾作である。
「それに表情も乏しいし、どこか覇気が感じられぬ」
(そ…そりゃあ、あんたが怖そうだからだよ)
とは言えず、黙っておくことにする吾作。
(それにしても殿の身内だからだろうか?よく見りゃ結構いい男だべさ)
この外見なら女にはモテそうだと思わず見とれてしまう。もっとも、こんなおっかない兄ちゃんに惚れる女などいるはずもないが…。
そんな事を考えていると源蔵が話しかけてきた。
「どうした?何か言いたそうだな?」
「い、いえ…別に何でもねえですだよ」
吾作の答えを聞いて源蔵は少し考える仕草をした後、ニヤリと笑みを浮かべて言った。
「よし、ならば俺と試合をせい」
(やっぱりそう来るかい)
予想はしていたとはいえ、いざそう言われると困ってしまうものだ。吾作には武術の才能がない事は自覚している。
殿ならば大丈夫かもしれないが、武術の才能がない自分がやれば怪我をするのではないかと不安になる。
だが源蔵はお構いなしに続ける。
「まさか試合をする事すら嫌とは言わぬだろうな?」
(ええい、仕方ねぇべ)
「…分かりましただよ」
こうして軽い試合を行う事になったのだが…その数分後には吾作は地面に転がされてしまっていた。
「い…痛てぇでさ!も、もう勘弁しとくれろ〜」
吾作はもはや訛を隠そうともせず泣きを入れる。しかし源蔵は容赦しない。
「もうへばったのか?ならばやり方を替えよう」

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