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影武者生活
官能リレー小説 - 時代物

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影武者生活 4

二人が部屋に入ると彼女は顔を上げて言った。
「まあ…話には聞いておりましたが、本当に殿に生き写しでいらっしゃいますこと…」
長く艶やかな黒髪に、整った顔立ちからは気品が感じられ、おっとりとした印象の柔和な微笑みをたたえている。
薄桃色の小袖の上に緋色の袿(うちぎ)を羽織っているが、その胸元には蕾のそれよりも二回りは大きな巨大な膨らみが圧倒的な存在感でもって自己主張している。
(でか…)
吾作は思わず彼女に目が釘付けとなる。
胸のサイズもさることながら、その身にまとった高貴な雰囲気…吾作は彼女に尋ねた。
「あんのぉ〜…ひょっとしてアンタ様は、このお城のお姫様でござらっしゃいますだか?」
「ていっ!」
バシッ!
「痛っ!?な…何するだ!?」
突然、美女は帯に差していた扇子を取って吾作をひっぱたいた。
「失礼、突然叩いた事はお詫び申し上げます。しかし今後その百姓言葉は一切封印していただきます!あなたは殿の影…殿になりきっていただかねばなりません。今後は百姓言葉で喋る度にコレでございますよ?」
言いながら美女は扇子をビュンビュンと勢い良く振る。
(参ったなぁ…外見とは違ってメチャクチャ厳しそうな女だべ…)
「何か言いたい事がありそうなお顔でございますね…?」
「い…いやぁ、滅相もねえだ…痛っ!?」
「…それから私、姫ではございません。現当主・種勝様の乳母で幼少の頃には教育係も務めておりました。そして今日より吾作殿の行儀作法指南役でございます。咲(さき)です。どうぞよろしく…」
種勝の乳母だったという事は少なくとも三十は超えていると思われるが、そんな年齢には見えない。
「こちらこそ、よろしゅうお願ぇしますだ。いんやぁ、それにしても相当な若作りで…痛あぁっ!!?」
「…失礼。話し方というのは身に付いた習慣でございますゆえ、正すには痛みで覚えていただく他ございません」
「そ…そういうもんかいのぉ…あ痛ぁっ!!(しゃ…喋れねえだ!)」
そんな二人のやりとりを見ていた静政は頷きながら言う。
「うむうむ…さすがはお咲殿だ。吾作殿、お咲殿の言う事を良く聞いて、一日も早く御館様の影が務まるよう励まれよ」
「こんのぉ!人の気もしらねえでぇ…痛っ!痛ぇだ!痛っ!ちょっ…もう勘弁してくれろ〜!」
こうして吾作の行儀作法修行が始まった。
まずは基本的な礼儀作法から始まって、挨拶の仕方、歩き方、食事の際の食べ方など、毎日のように厳しい指導を受ける事になった。
だが、元々農民であった吾作にとってそれは苦痛ではなく、むしろ充実した日々となった。
朝起きてから夜寝るまで常に咲の指導を受けていたが、彼女は厳しくも優しくもあり、まるで母親のように温かく接してくれた。
(こりゃいい先生に巡り会えたかもしれねぇだな)
やがて季節は流れて春になった。
その頃になると吾作は立派とは言えないまでも多少は見れるようになった。武術に関しては才能が無かったものの学問についてはそこそこ優秀だったらしく、特に算術においては並外れた才覚を発揮した。
そんなある日の事である。
いつものように咲の指導を受けていると、突然襖が開かれて一人の青年が現れた。
年の頃は二十代前半といったところだろうか?背丈は高く、体つきは細身ながらも筋肉質であり、切れ長の目をした美男子と言える顔立ちをしている。
そして何よりも目を引くのは、その腰まで伸びた長い銀髪だろう。

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