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今日からお殿様!?
官能リレー小説 - 時代物

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今日からお殿様!? 3

「父上今までありがとうございました」
そう言って和馬は、今日まで父親だった男に深々と頭を下げる。
「いいえ・・・よくご決断いたしました和馬様・・・和馬様わたくしは最早老い去らばえた老武者に過ぎませんが、殿には決して裏切る事の無い刀が一振り有る事をお忘れなきように」
普段は頑固で厳しい老武士の眼に涙が光り流れ落ちる。
そして少年もまた溢れる涙を拭おうとはしなかった。
こうして和馬は秋吉田藩二十五万石の藩主として生きる事に成ったのだった、



新たに秋吉田藩の藩主に成った和馬は、すぐに藩士たちの前で新藩主のお披露目を行い。
続いて江戸で将軍に謁見する事で、正式に秋吉田藩の藩主として認められた。
この三か月ほどは、和馬にとっても目の回るような忙しさだったが、近頃ようやく一息つく事が出来るように成っていた。
そして今、和馬の前には数多くの書類、それに勘定方の家臣たち、それに家老の牧村の姿があった。
「どうしてここまで我が藩の財政は酷くなったのだ。」
ようやく藩主らしい態度が身についてきた和馬の問いに、重い表情の家臣の一人が発言した。
「はい。先先代藩主、和康様の代に贅沢を重ねたこと、それを先代の公方様の大老様に目をつけられ、翔鷹丸、瑞鷹丸ら大船建造を命じられたがゆえにございます。」
「翔鷹丸型がなまじ見事な南蛮式大船であったがために、瑞鷹丸を除く四隻を献上せねばなりませんでした。」
「当藩の名こそこれら大船によって天下に轟きましたが、力を持ちすぎさせぬようにと、名誉なこととは言え献上させられたのです。」
「現在、当藩の財政が借財だらけの中辛うじて回っているのも、瑞鷹丸による北方交易を特に認めていただいたが故。」
「先年、大船建造の禁が解かれ、他藩にも大船の建造に手を出している所もいくつもあり、瑞鷹丸だけではいずれ押し切られて交易収入も激減してしまいます。
本来なら、そろそろ瑞鷹丸の代艦建造が必要な時期に差し掛かっておりますが、この財政難で設計だけはできたものの着手の目途がついておりませぬ。」
次々に話される家臣たちの言葉に、和馬は頭を抱え込む。
「う〜ん・・・どおしたものかな・・・」
江戸時代も半ばを過ぎ、貨幣経済が発達したこの時代、古い穀物に頼った多くの藩が、財政危機に陥っていた。
秋吉田藩は、幕府に蝦夷地の警護を命じられた事と引き換えに、長年幕府の直轄領である函館港を用いて、アイヌやロシア、アメリカとの交易を行っている。
その為他藩に比べれば比較的裕福な藩だが、決して余裕が有る訳では無いのだ。
まして先年大船建造の禁が解かれた事で、今まで事実上独占状態だった海外との貿易の特権も失おうとしている。
北方の警護の為にも、外国との貿易の為にも、老朽化した瑞鷹丸の代艦建造は急務だった。

「・・・殿・・・一つだけ方法がございます・・・」
牧村は声を潜めて和馬の側ににじり寄る。
「何だ?何かアイデアが有るのか?」
秋吉田藩一の知恵者であり、藩政に興味を持たなかった先代、先々代の藩主に代わって、事実上秋吉田藩を動かして来た老臣の言葉に、和馬も耳をそばだてる。
「はい・・・実は現将軍の末の妹君が、御年15歳で在らせられまして・・・今年16歳で在らせられる殿と丁度齢が釣り合います・・・そこで御公儀からその姫君を殿の正妻にどうであろうというお話が来ているのでございます・・・」
「何?本当か?」
「はい・・・正式な話では無いのですが、まず間違いなく・・・」
そう言うと牧村は、小さく肯いた。
「・・・だが待てよ・・・何故それで瑞鷹丸の代艦建造が出来るのだ?・・・それに大藩と言っても、我が藩は飽くまでも外様だ・・・本当に将軍家の姫が来てくれるのか?」

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