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今日からお殿様!?
官能リレー小説 - 時代物

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今日からお殿様!? 12

牧村のその発言に一人の老臣が進み出て言った。
「お待ちくだされ牧村様。姫様がご実家へ帰られたとなれば、公方様から何か報せか沙汰か、または和馬様に難詰か呼び出しの使者が来るはず。それが現れぬということは、ご実家へ帰られたというわけでは無いのではないでしょうか?」
その指摘に牧村達家臣一同は、考え込んだ。
「む・・・・そういえば・・・。」
「もしかするとご公儀にはまだこたびの件は伝わってはいないのではありますまいか?」
「だとしたらお方様はどちらへ行かれたのか・・・・・・」
そこで和馬がようやく問いを発した。
「何か、書置きの類はなかったのか?」
「いえ・・・くまなく探しましたが、そうした物はございませんでした。また、失踪なさる前には悩まれているご様子でしたが、和馬様を嫌悪した様子はありませんでした。」
紫月に随行して秋吉田藩入りした侍女のさえが答えた。
「で・・・では・・・紫月姫はやはり誘拐されたと?」
「なんと!!では一刻も早くお救いせねば!!」
「とにかく公儀にご連絡を!!」
「何をバカな!!そんな事をすれば我が藩は、良い恥さらしぞ!!」
「さよう!!この件は何とか内々に処理せねば!!」
「何をバカな事を言っておる!!そのような愚かなメンツを気にして紫月姫に何かあったらどうする!!」
「その通りだ!!紫月姫に何か有れば、それこそ公儀に申し訳が立たん!!」
「ではとりあえず内密に公儀にこの件をお知らせするというのはどうであろう?」
こうして秋吉田藩は、その総力を上げて紫月の捜索を始めた。
しかし、紫月の行方はようとして分かたなかった。

 …家老達が大騒ぎしている間、和馬は一人ぽつんと捨て置かれていた。
 長年仕えてきた譜代の家臣達にとっては突然現れた若い藩主など頼りにならないと諦めているのだろう。
 また和馬もそういう扱いをあまんじて受け入れていた。

 ある晩。
 和馬が紫月のことを考えてまんじりともせずに横になっていると、ふと天井で怪しい気配がした。
「な…何奴だっ?!」
 布団を跳ね上げて飛び起き、和馬は刀を取って叫んだ。
 かたかた…。
 天井板が動いてひとつの影が下りてきた。見れば、まだうら若い少女である。
 片膝立ちで座るこの少女。顔の下半分は覆面で隠している。丈の短い着物の裾から伸びる、はちきれそうな太ももに思わず目が釘付けになってしまう。
(この女…もしかして…刺客?)
 和馬が刀を抜こうとすると、少女がすっと片手を前にかざした。
「敵…違う」
「なんだって?」
「あたい…御庭番。名前は楓。紫月様の居場所、突き止めた」
「何っ? それは本当かっ?!」
「ウソ言わない。あたいについてきて」
 和馬は立ち上がって隣の部屋に控える凛を呼んだ。
「お呼びでございますか?」
「紫月が見つかった! 急いで城を出るぞ!」
「ははっ」

「言い忘れたけど大勢で来られると困る・・・その女はもう連れて行くしか無いけど、これ以上の同行者は無しでお願い・・・」
「?・・・何故だ?」
「悪いけどそれが私の主の命令だから・・・」
くノ一の言葉が凛の警戒心を呼んだ。
「和馬!!この女に本当に付いて行って良いのか?」
「来る来ないはお前の勝手・・・でも来ないなら紫月姫は救出しても、お前の下に返さない・・・私の主はそう言ってた・・・」
くノ一は能面のような感情を感じない無表情で、淡々と和馬にそう伝えた。

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