青の水着、少女の勇気 5
夏休みが明け、部活を引退した美貴は受験勉強に全力を尽くすことになる。
その勉強の合間を縫って、水泳部の仲間だった大谷優香と一緒に近所のトレーニング施設にやってきた。
「美貴は進学しても水泳続ける?」
「うーん、まだわからないな」
他愛もない会話をしながらプールの向こう側を見つめる…
その先には見覚えのある姿。
「あれは…」
藤堂康介、彼に間違いなかった。
美貴は話しかけたい気持ちもあったが、優香にからかわれそうなのが嫌でできないでいた。
優香は地黒なのが原因でギャル化しており、体育会系らしい気性で友人の中でも彩とは明らかに違うタイプだった。
派手な割にストイックな一面のある優香と結構本気になって美貴は泳いだ。
「ここって、結構ガチだよね。女子は少ないし、施設もばっちいけど空いてるからよくね?」
「そろそろ出よ。ここのシャワー室ってどう?」
「そうそう、バスタオル持ってきた?ロッカーからちょっと離れたところにあるから」
二人は少し早いが、ロッカー室に戻る。
「てめぇ!」
「あーっ!」
そこにはなんと康介がおり、二人のロッカーを漁っていた。
優香は激昂し、美貴はショックを受ける。
「要するに部活が出来ないストレスと受験のプレッシャーで、ついって訳か」
「なあ、いいだろ?まだ盗んでないし…」
「そんな問題じゃねーだろ!ってか、なんでタメ口?絶対反省してないな、どうする?美貴」
「……」
正座してる康介に落胆し、ホテルでの日々で男のエゴを目にした事で多少は免疫がったつもりだが、やはり彩のように割り切れない自分がいた。
「何が目的だったんです?」
「いや…別に…」
「答えられないなら警備室に突き出すからね?」
「だから、俺は…」
しどろもどろの康介。ついに涙目になる。
「立ってください」
美貴が冷静さを装いながら告げる。
「えっ…」
「ロッカー漁りながら股間おっ立ててたとか?まさかねぇ」
最終的には優香と共に美貴は康介の全裸を撮影した。
「イケメンだから警備室は許してやる。その代わり、次はないからな」
「…」
康介は二人に弱みを握られた。
「おい、美貴…」
「それ、おもしろそう」
「おい、女の下着に興味あるんだろ?いいとこ連れてってやるよ」
美貴は優香の提案に乗ると、三人でトレーニング施設を後にした。
「思った通りだ、よく似合う。ツルツルの足といい、ウジウジした部分も女っぽいし」
「うん、かわいい」
逆らえない康介は下着どころか服からウィッグや化粧品まで買わされ、女装させられる。
完成度の高さに美貴は気を良くし、康介がしたことも忘れかかっていた。
散々楽しんでしまい若干の申し訳なさも感じながら康介をもとの格好に戻し解放する。
「二度とすんなよー」
優香も十分満足したようだ。
優香と別れ、ひとりで電車に乗って帰宅の途につく美貴。
途中、車内が混みだし少し慌てる。
(ヤダ、休みの日なのにこんなに乗ってくるなんて)
四方を男性客に囲まれてしまう。それだけならいいのだが…