ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 982
一度地元も離れているし、仕事も辞めているわけで、そういう変わった面を知らされたくなくて行く気がしないのだ。
まして今は結婚して子供が生まれ、天下の大企業である青山グループの社長と同居している…まあ友人連中は信じてくれないだろうけど。
「まあ今は、香澄と娘たちとゆっくりしていたいしね」
「私は大丈夫ですよ」
「大丈夫って…?」
「いえ私のことを気づかってくれているのなら、そんな心配は大丈夫ってことですよ。」
「あ、ああ有り難う…だけどそういうんでも無いよ…」
香澄の気持ちは嬉しいけど、今は本当に昔の友達に会うのは腰が引けるからな…
「そうなんですかぁ?…せっかく出来た友達なのに…なんだか勿体ないですね。」
確かにあの頃は友達は多くてナンボみたいな認識があった。
でも今、家庭を持った身として考えると遊び呆けてばかりではいけないだろう。
ある種のケジメのようなものだ。
「今は香澄と娘が一番大事だからね」
「ふふっ、匠さん…」
2人でソファーに座って寄り添う。
こういうゆっくりとした時間を香澄と過ごすのは久しぶりだ。
何たって家にいる時は、2人寄り添うだけでも憚れる思いがしたからね;…
「なんだかやっと新婚生活が送れるって感じだな…」
香澄の額に唇を寄せ、そっと肩を抱く…
「ふふっ、私はずっとそう思ってましたけどね」
香澄は僕に身を預けながら微笑んでいる。
「何気ないこの瞬間が、私は一番幸せです。ここに樹と香もいればもっといいのでしょうけど」
「任せられるときは任せていいのさ」
香澄の手が僕の腿をさする。
それに負けじと僕も、香澄の肩から首筋を撫でる。