ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 932
「ま、純さんも悪いことしてるわけじゃないですから」
「まあ、仕事だし、それだけの人気作品だからな…」
「自分がモデルにされて、嫌なところとかはあります?」
「現実の僕はそんなにカッコいいわけじゃないし、あのときは、人には認められないような恋愛だったわけで…正直、恥ずかしい気持ちはあるんだよね…」
純ちゃんや弥生さんを責める気持ちなんて毛頭ないんだ。
僕が同じ立場だったとしても同じことをしただろうし、それを弥生さんに断ったか?…っていうと、多分僕も何も言わなかったと思う…
「私なんかが思う以上に、匠さんの気持ちは複雑なのかしら?…」
「いや、今はそのことを初めて知ったんで正直戸惑ってはいるんだけど、暫く立てばきっと何でも無いことだって…分かると思うさ…」
そう、どういう形にしろあのことが形として残るなんて、素敵なことではあるんだ。
淡い初恋の記憶。
弥生さんに再会できた今も含め、それは僕の中で今も色濃く残っている。
改めて振り返ると甘酸っぱい、でもいい思い出だ。
それが半ば改変されているとはいえ、そのままストーリーとして展開される、少しこっぱずかしい気持ちはあるけど…その時は弥生さんと一緒に見れたらいいなぁ、なんて思っている。
まあその僕の役を啓くんが演じると思うと、尚更に考えちゃうものもあるけど、それは弥生さんだって同じことだろう…
何たって天下の大女優である花咲夢乃が弥生さんの役を演じるんだから、そういった意味で言えば僕の方がマシかもしれないよね…
それにしても啓くん…
演技経験も無いだろうに、ちゃんと出来るのか心配になっちゃうよな…
「ふぅ…」
「匠さん、お疲れですか?」
「いや、疲れては…うん、まあ、今日は朝から緊張しっぱなしだったからね」
何しろあの花咲夢乃さんに会ったんだもんな。
「ふふ、私たちは部屋でゆっくりしてますから、匠さんはマッサージでも受けてきたらどうです?」