ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 896
「もう、純ちゃんは…」
さすがの香澄も呆れ気味に笑う。
「相当だね」
「お酒が大好きだとは聞いていましたが」
「匠くんもどうぞ」
「僕はほどほどにしておきますよ」
弥生さんに差し出されたワイングラスを手に取る。
ここで出されるのだから、相当に高級なものなんだろう…
味なんて分からないけど、これってかなり飲みやすいワインだよな…
“ほどほどにしておく”と言っておきながら、僕は一気にグラスを空にしていた。
「いい飲みっぷり!久しぶりなんだから今日は嵌めを外して、心行くまで楽しみましょうねぇ」
弥生さんが声を弾ませて僕のグラスにワインを注ぐ。
いや、これビールとは違うでしょ…弥生さんも結構飲むの?
「私が味わうには後何年ですかね〜」
「この敷地から出なきゃ大丈夫なのではないですかあ?」
その声は茜ちゃん…こちらもほろ酔い気分。香澄にいいように勧めないでよ…
まあぁ子供たちも寝ていることだし、今夜ばかりは多めに見てあげようか…
てか、まだ香澄は未成年ではあるんだけど;…
「何風紀委員みたいな顔して見ているんです?…自分の妻が不道徳だと許せないとか?…」
「あっ、別にそんなことは無いけど…」
まあ百歩譲ってお酒ならいいのかなぁ。
これが他の男とイチャイチャするようなことだったら絶対に許せないんだけど…
「ふふふ、匠くんだって結構やんちゃだったじゃない」
「弥生さん、それは言わないでくださいよ」
僕だって過去にそういうことはあったんだから、強くは言えないね。