ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 855
「でも驚いたよ、美月ちゃんって何時もこんな早くに出社してんの?」
美月ちゃんの背中を追うようにして僕は訊ねた…
「ええ、仕事前にモーニングを食べるのが日課になっているは…」
ハイヒールの踵を打鳴らしながら、エントランスホールをさっそうと歩く美月ちゃん…
なんかデキル女って感じですね…
顔立ちはどことなく幼くて背も沙織ちゃんや夏子さんよりも小柄。
葉月ちゃんよりも年下に見えるんじゃないかと思うけど、仕事では本気を見せるとすごい。
立ち居振る舞いはキャリアウーマンになるんじゃないかって思うくらい。
「基本うちって出社するの早い人が多いよ。葉月がいつも遅刻寸前にやってくるくらいで」
「あ、ああ、そうだねぇ」
カフェテリアの中に2人で入る。
「あれ?…夏子さん!」
窓際の席で、コーヒーカップ片手にノートPCに向かっているは間違いなく夏子さんだ。
「あらぁ、思ったよりも早く終わったのね…」
僕の姿に気づいた夏子はニッコリと笑う。
「なんだ夏子さん…僕はてっきり仕事の打ち合わせか何かで部屋を出ていったとばかり…」
「何事にも理由付けは必要なのよ」
テーブルまで歩いてきた僕の鼻先を指で突っつくようにして、夏子さんは意味深な笑みを浮かべた。
…もしかして、ナニしてたかバレてます?
聞きたかったけど今は聞けない。
「まだ時間はあるし2人とも座んなさい。沙織ちゃんは残りの処理中でしょ?」
「はい、沙織はホント頑張りやさんで…」
美月ちゃんは夏子さんの正面の席に腰を下ろす…
「仕事で忘れたい気持ちも分かるけど、無理し過ぎないか心配だは…」
ん?…夏子さんは何を言っているんだ?…
「そうですね…もう半年にもなるんですよね…沙織の彼氏が亡くなってから…」
「うえっ?!…それってどういうことです!?」