ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 802
「…悪い噂が多いの?」
「悪いというわけじゃありませんけど…うまくいってない、という話は何度か…」
まあ、美玲ちゃんもそれを悩みにしていたけど。
社内恋愛だとそういう噂が広がって過剰に反応する輩もいるからなぁ。
「私が恋愛なんて語るのもおかしいですけどね」
「葉月ちゃんは彼氏いないんだっけ?…」
入社当時に聞いた気もするけど、もう覚えてはいなかった…
「はい…別に清い身体を守っている訳では無いんですけどね…」
はい?…
それって…まだ処女だってカミングアウトしてるってことですか?…
葉月ちゃんはそう言いながら僕の方をチラチラと見ながら表情をうかがうような仕草をする。
…さぞかしご両親は大事に育てたのだろう。
うちの課では最年少なのによく出来た子だと思う。
こんなに可愛いのだし、言い寄ってくる男だっていたに違いない。
「焦ること無いさ…葉月ちゃんだったらそのうちに、絶対いい男が現れると思うよ…」
本当にそうだ…
こんな可愛い子をほって置くなんて、今の若い男子は何をやっているんだろうね…
「匠さんはやっぱり…私みたいな女は…重く感じますか…?」
困ったように微笑む葉月ちゃん。
それは美玲ちゃんとはまた違う、陰のある美しさを感じた。
「そんなことはないさ。葉月ちゃんには葉月ちゃんの魅力があると思う。自分を引け目に捉えることはいけないんじゃないかな」
「そうですか…匠さんはやっぱり優しいですね…」
その笑顔に引き込まれそうになる。
「私、匠さんみたいな男の人が好きなのかも…」