ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 724
見知った顔にこんなに驚かれるのは、正直恥ずかしいというか、こちらも視線を合わせづらい。
周りのメイドちゃんたちの視線もいつもに比べると…
…その中にエリカちゃんの姿はなかった。もしいたなら、どんな顔をしただろう。
「ご主人様がお待ちになってますので…」
杏さんは冷静さを保とうとしてそう言い、案内してくれる。
「ホント、そっくりなんですね」
後ろから舞ちゃんが僕に小声で言う。
「ああ、正直僕も驚いてんだ…」
「それを言うなら僕もですよ…ここまで似ているとは思ってもいませんでしたからね…」
巧くん;…聞こえていたんですね;
「やだぁ声までそっくりぃぃ…」
はいはい…それもとっくの前に、充分に驚きましたから;…
途中でメイドちゃんたちとは別れ、杏さんの案内に従い歩いていく。
「青山家に来るのは初めて?」
「そうですね…こんな縁がなかったら来るはずの場所ではないので」
ライバル企業だから仕方ないか。
「そっちはある、ってことですか」
「いずれここに住むことになるよ」
「ああここのお嬢さんとでしたよね…」
調べはついてるってことかよ…
「昨日子供が生まれてね…」
いくらなんでもここまでは知らないだろう…
「生まれたんですかぁ〜!、僕も叔父さんって呼ばれる存在になるってことですね!」
まあぁそういうことになるだろうけど…
…しかしどこかよそよそしい雰囲気がなくなり、僕としてはちょっとだけ安心できた。
ただ、勝負?はこれからなのだけど…
「こちらです」
杏さんがドアの前で立ち止まる。
再び気を引き締め直す…
杏さんがドアをノックして、ゆっくりと開ける。