ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 718
「ああ、いろいろ話したよ。そこで初めていいヤツだと思ったさ」
「そっか…」
「栞がリビングであんなことするなんて思わないけどな」
「それ啓くんの前で言うの?」
声を荒げる栞だが、その顔は笑っている。
…まぁ、啓くんだって梓と付き合っていたときは…ねぇ。
もうあんなことは無いと思うと少しホッとはするけど…梓と啓くんのことだ…
なんて、あらぬ心配もしてしまう;
まあ結婚したからって僕みたいな奴もいる訳だから、絶対に無いとは言えないよな…;
「何ヘンな顔しているんですぅ?」
「あ、いや;…;…;ゆかりさん遅いなって思って…;」
しどろもどろになりながら、頭にも無いことが口から出る;
適当な返事をして焦りまくる僕に、栞がクスッと微笑むのがわかった。
いつもなら生意気に思うけど、今はその表情が見れてちょっとホッとする。
「母さんならそのうち帰ってくると思いますよ…」
啓くんがそんなことを言ってると、何やらバタバタという物音が聞こえてきた。
「おっ噂をすれば…だねぇ」
啓くんは玄関に向けてリビングから出て行く…
「えっ!?匠くんが来ているのぉ!」
啓くんから告げられたのだろう…ゆかりさんの声がここまで聞こえてくる…
「こんな偶然ってあるのね…さあ遠慮せずに上がって下さい…」
え…?誰か一緒なの?
「えっ?あの…僕は…」
「いいからいいから早く!」
ゆかりさんに促され、戸惑いの声を上げる男の声。
ん?これって…
「お兄さん…?」
啓くんが驚いたような声を出す。
いったい誰を連れてきたというのか…