ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 716
…梓ともそこで出会ったんだもんな。
啓くんと恭介が面識があっても驚くことではない。
「どうなんだ?」
「人としては勝てるところはありませんよ。僕は何にしても未熟です」
啓くんはサバサバしながらそう言った。
「別に啓くんが奴に劣っているとは思わないけど、僕も今朝会って分かったよ、案外悪い奴じゃないってな:…」
「ですよね…何か花木さんだったら、梓が引かれるのも仕方ないっていうか…」
啓くんの言葉に栞の顔をチラッと見てしまう…
それに気づいたのか栞はゆっくりと口を開いた。
「私も…梓を怨む気持ちにはなれないんだ…だからといって恭介のこともなんだけど…」
2人の気持ちは似ている気がする。
お互いが付き合っていた異性が、近しい人と一線を越えた…その気持ちは複雑だろう。
「まあ、梓と彼が結婚して、子供が生まれるときには素直に祝ってあげられるよういたいな」
「そうだね…」
「そうですね…」
本当に栞も啓くんもいい子なんだと改めて思ってしまう。
運命の悪戯みたいなもんとはいえ、神様も酷なことをするもんだよ;…
「でもやっぱり、今までみたいにあの家に遊びに行けなくなるは寂しいです…」
啓くんは、膝の上で拳を握りしめた。
「そんな…いつでも遊びに来ればいいじゃないか。啓くんはもうウチの家族みたいなもんじゃないか」
「でも…」
「そうだよ。梓はいなくなっちゃうかもしれないけど…啓くんが行けない理由なんてないよ」
「お二人とも…」