ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 616
「恋ちゃん、お久しぶりです!」
「はいお嬢様、相変わらずお元気でなによりです!」
長い黒髪が綺麗な子だ。
顔立ちは幼いけど、香澄より背が高くて、スタイルも良さそう。
「初めまして、匠さんですね?」
「あ、ああ…」
「なんだか初対面な気がしませんはぁ!…」
僕に向かい含み笑いを浮かべる恋ちゃん…
参ったな;…
君は夕べのリラクゼーションルームやさっきのエレベーターでの出来事を見ていたってことですかね?;…
「恋ちゃ〜ん、私たちスズタコーポレーションの鈴田巧って人について調べたいんだぁけど…」
「ああ、以前から噂になっていたスズタの御曹司ですね」
「そうなんです!匠さんにそっくりなんですよ〜」
「名前まで一緒ですもんね」
香澄と僕とをチラチラ見比べる恋ちゃん。
可愛い顔していながら相当なやり手の雰囲気がする。
「まあ、調べて見ましょう」
恋ちゃんはパソコンデスクの前に座り素早くキーボードを叩いていく。
「ダメだぁはね…、『鈴田巧』では姓名判断サイトしか出てこないはね…」
「可笑しいでしょ?…あれ程の会社のお御曹子が擦りもしないなんて…」
「香澄が言ってたみたいに、会社で噂している奴とかいないですかね?…」
「了解!スズタコーポレーションで当ってみるかぁ‥」
僕の言葉に恋ちゃんは即座に対応する。
「うぅ〜ん…社内の不倫や恋愛関係の書き込みは多いんだけど…」
カチャカチャとキーボードを叩きながら、恋ちゃんはあらゆるサイトに跳んでいく。
「存在自体が社外秘なんですかね…鈴田巧って人はほんとにこの世に存在するんでしょうか」
手がかりがつかめない中で、香澄が呟く。
…そんなはずはない。
美咲さん、彩乃さん、澪さん、そしてエリカちゃん。
皆僕にそっくりだと言っていた。ある一部分を除いて。
彼女たちが嘘をついてるなんて思えない。