ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 594
「いやぁ、疲れたときって実際よりも身体に効くからさぁ」
「ふふっ、よっぽどいい運動されたんですねぇ」
彩乃さんはニコニコしながら僕の隣に座る。
「昨日はありがとうございました。澪さんとはお話できました?」
「あぁ、うん…まあね…」
あの後、彩乃さんとよりも激しいセックスをしたなんて言えないよな;…
「巧さんのことは詳しく聞けました?…」
「あっ、ここに新しく入ったメイドさん、鈴田家に代々仕えていた人の娘だったんだよ…」
「まあ…」
「僕も驚いたよ…何たって夕べ彩乃さんと澪さんに話しを聞いていたばかりだったからね…」
「その子には、私が巧さんとお付き合いしていたとはなかなか言えないよな…」
「彼女も年経つごとに兄のような存在から恋人のように思いだしたとか…」
彩乃さんはフロアの向こう側を見て言う。
「匠さんも、大変ですね」
「まあ…ね」
「この際、早いうちに鈴田巧さんとお会いになった方がいいんでは?…」
「ああ、僕もそう思っているんだ…いろいろ考えても仕方ないからな…」
「よかったら、私が仲介役になりましょうか?…」
「あ、いや…そこまで彩乃さんにお願いする訳にはいかないよ…」
「それは構わないんですけど…巧さんは私のことなんて覚えているか、ちょっと心配なんですけどね…」
「お付き合いしてた女の人なんですから、覚えているのは当然じゃ…」
「巧さんはそれ以上に女性にもてたわけですから…」
…それだけの数がいたら名前なんて、ってわけ?
僕とは大違い…ってか、それってどうなのよ?
「まあ、取引も近いのでね」
「頑張ってくださいね」