ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 568
ピンクのそれも、僕にはちょっと手を伸ばす気にはなれなかったけど、我侭言える立場じゃないよな;
僕は作り笑顔でバスローブを受取り、それを羽織る。
「やっぱり匠さんには短かかったですぅねぇ」
微笑むエリカちゃん…
多分これって、女性が着たって太腿の処までしかないんだろうから、僕が着るとどうなったか分かるよね;?…
僕はその恰好に汗しながら肩から抜き取り、慌ててそれを腰に捲いた。
「もう少し待っててください、たぶん蘭が持ってきてくれると思うので…」
「う、うん…」
その前に誰かきやしないかと思うと不安になる。
「ところで…」
「うん?」
「匠さんは、巧さんと…なんか紛らわしいかもしれませんけど…お話を聞いたこととかってあるんですか?」
「話したことはないよ。僕は彼のこと何も知らないからね…」
それはそうだった…鈴田巧のことで知っていることと言えば、生年月日と陰毛が無いことぐらいだからな…
「そうですよね…自分とそっくりな人のこと、気になるのは当り前ですよね…」
「うん…もしかしたら双子じゃないっかて、自分の母親まで疑ったりしてな…」
僕は照れながら頭を掻いた。
「その可能性もあるんじゃないですか?…巧さんは鈴田の家の養子ってことになっているんですもの。」
エリカちゃんはインスタントコーヒーを入れながら考え込んでいた。
「そ、そうなの?」
鈴田巧が養子だったことは、初めて聞いた。
「ええ、巧さんは美恵子さんとは親子ではないって…そう聞いたことがあります」
「ああ、そうか…」
やっぱり、双子として生まれ、離れ離れで育てられたと考えるのが正しいのだろうか。
だとすると、僕と彼を引き裂いたのはいったい誰なのか…
「それって…今の社長の鈴田美恵子さんと巧って男とは、血の繋がりは無いってことなのかな?…」
僕は思わず身を乗り出していた。
「それは一概にそうとも言えないかも…人知れず子供を産んでしまったとしたら、自分の本当を引き取るには、養子縁組しか無いんじゃない?…