ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 563
「一緒にゆっくり…?」
「私は今日は午前のシフトなので!」
蘭ちゃんは微笑んでそう言う。
…いや、初対面でいきなり…しかも僕の服はどうするつもりなの?
「さ、ここですよ」
蘭ちゃんは自分の部屋に案内してくれる。
ドアプレートには『水橋蘭・木原エリカ』と2人の名前が書かれていた。
部屋に入るとピンクが目の中に飛び込んできた。
フリフリのカーテンにぬいぐるみ…
モノトーンでまとめられていた杏さんの部屋とは大違いだよ;
「なんか僕には場違いって感じの部屋だね…」
「そんなこと無いでぇすよ。匠さんだってカワイイじゃありませんかぁ〜」
…;
このぐらいの年令の子って、何でもカワイイって言うだっけな;…
蘭ちゃんも世代が近いのだろう、香澄に通ずるものを感じる。
リビングルームの奥、寝室までピンクが続く。
これはこれで、非常に女の子らしいというべきか。
そのベッドで、スヤスヤと眠っている女の子がいる。
この子がエリカちゃんか。
「近づいても目を覚まさないと思いますよ」
蘭ちゃんは言う。
僕は足を忍ばせ、エリカちゃんの顔を覗き込む…
長い睫毛に紅い唇…
目茶苦茶キスしたくなっちゃうよね;…
「可愛いでしょ?…エリカは子供の時からこんなに可愛いかったんですよぉ〜」
ベッドサイドのフォトスタンドを手に取る欄ちゃん…それを僕に手渡した。
えっ?…
幼い美少女の横でピースを掲げる少年…
その少年は自分の幼い時と、そっくりだった…
「蘭ちゃんはさ、エリカちゃんと幼い頃から親しかったの?」
「いえ、そんなことは…エリカと会ったのはここに来た初日でしたし」
僕だってエリカちゃんと会ったことも、名前を聞いたこともない。これが初めてだ。
ということは、この少年は鈴田巧?
おそらく高校生くらいだろう、その顔を、じっと見る。
…ますます自分のように思える。