ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 502
「ふふ、また可愛い女の子のことでも思い出していたんじゃない?」
「あ、いやそんな;…」
まさか弥生さんとの初体験を思い出していたなんて言えないもんな;…
僕はちょっとだけ反応してしまった股間を隠すように、足を組んだ…
「それより、食事の準備はいいんですか?」
「だいたいは済んだよ。彼も帰りが早かったからすぐ、ってわけでもないみたいだし」
「そうでしたか」
弥生さんがテーブルに視線を落とす。
「あっ、これ、椿が作ったクッキーね」
「ええ、美味しいですよ」
「あの子、私みたいな料理人なりたいなんて言っているのよ…」
「それは素敵ですね…」
「ええ、前の夫とは子供が出来ないことを攻められて、"もう子供なんていらない!"ってムキになることもあったけど…」
「あの頃は大変でしたよ…」
「でも…椿が出来て、本当によかったと思っているの…」
「それはそうですよ!椿ちゃんは本当にいい子ですから…」
「ただね…」
「ん?どうしたんです?」
「私も母親だけの顔で生きていくには…まだまだ"女"の部分が邪魔をするの…」
「へぇ…それは…」
「椿のことを温かく見守ってあげたいって思う気持ちと、そうじゃない気持ちが交差するの…」
「それは…難しいですね…」
困ったようにため息を吐く弥生さん。
「まだ、私も、負けたくないのかしらね…」
「誰にです?」
「そうね、例えばここにいるメイドさんたち…皆、眩しいぐらいに輝いているは…」
弥生さんはそう言って目を細めた…
「僕は一概にそうとは思いませんけど…確かにここのメイドさんは皆、魅力的です…でも弥生さんだって僕にとっては充分に眩しい存在です…」
僕は弥生さんの目を見て、はっきりと言った。